エネルギー価格高騰

現代ビジネス 環境エネルギー

脱炭素・EV化を推進する国家・企業は総崩れか

ユートピア的幻想の結末がこれか
大原 浩国際投資アナリスト:人間経済科学研究所・執行パートナー

電気代・ガス代が上がり始めている

原油をはじめ化石燃料の価格が高騰し、我々の生活にも強い影響を及ぼし始めていることについては、私が執行パートナーを務める人間経済科学研究所代表パートナー有地浩の「天然ガス価格の爆騰で苦境に立つイギリスは、日本も他人事でない」が非常に参考になる。このレポートによれば、東アジアのLNG(液化天然ガス)の指標価格(JKM)は1年前の約6倍に値上がりし、日本の電気・ガス料金は9月分以降3ヵ月値上げが続いている。東京電力の場合、平均モデルで8月の6960円が11月には7371円と5.9%の上昇であり、庶民にはつらい状況である。しかも、10月18日にこのレポートが公開された後の10月28日には、「12月の電気ガス料金 全社値上げ 4カ月連続 今年に入り1000円超値上がりも」と報道されている。
日本だけではない。欧州では10月5日に代表的な天然ガスの先物価格が100ユーロを超え、年初から9ヵ月ちょっとで約6倍と高騰した。当然のことながら、各国で電気・ガス代が大幅に値上げされている。
もちろん、エネルギー価格の高騰は色々な要素が複合的に絡まっているのだが、それを「悪化させている主犯」は8月22日公開「脱炭素・EV推進、『合理的な科学的根拠がない』この方針は、もはや『宗教』だ」で述べた「脱炭素教」であることは間違いがない。そもそも、今回のエネルギー価格高騰の前から、我々は「脱炭素教」のせいで、極めて割高な電気料金を支払わされてきたのだ。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」に電気の使用量を乗じて算定し、毎月の電気料金の一部として利用者が支払いを「強要」されているものだ。この件に関しては、キャノングローバル戦略研究所・研究主幹・杉山大志氏の「『脱炭素』で電気代が5倍の年間60万円~9年後、あなたは払えますか?」が非常に参考になる。
同氏によれば、太陽光発電などの賦課金だけで、すでに国民は世帯あたり年間6万円も負担している(うち5万円は直接的には企業の負担だが、小売価格上昇や給与減少などの形で最終的には消費者〈個人〉に跳ね返ってくる)。
そして、恐るべきことに、菅政権が打ち出した「2030年46%削減」で年間60万円もの電気代(合計)がのしかかる計算になる(企業分を含むが最終的に消費者などが負担する)。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」だけでも、とてつもない負担である。その上に、昨年5月6日公開「原油先物マイナスでも『世界は化石燃料で回っている』と言えるワケ」で述べた、「人類社会の発展に多大な貢献をしてきた」化石燃料を、「脱炭素教」の信者たちがないがしろにした報いまで善良な国民が負担させられるのである。
「脱炭素教」の信者たちは、きちんと「地球市民」に迷惑をかけた責任を取るべきである。そして、アル・ゴア氏をはじめ、「脱炭素教」利権でがっぽり儲けた人々の利益を吐き出させるべきだ。
また、岸田政権は、菅政権の最大の失策の一つといえる「脱炭素・EV化」の流れを早急に逆転させねばならない。