電気代10万円超え 北電値上げ申請

「オール電化」に恨み節 北電値上げ申請

閲覧希望
会員限定記事:2023年1月27日 22:34(1月29日 09:27更新)
北海道電力が一般家庭の多くが契約する規制料金を6月から平均約35%値上げすることを国に申請し、上川管内の利用者にも反発が広がった。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う物価高で家計は厳しさを増しており「これ以上どうすればいいのか」と悲鳴が上がる。
 「年金でどうやって生活したらいいんだ」。旭川市でオール電化の一戸建て住宅に暮らす安川智さん(75)は憤る。20年前に自宅を新築した際、北電に「お得」と勧められオール電化を導入。ところが、電気料金は値上がりする一方で、昨年12月の電気代は7万円を超えた。暖房の使用が多い今月は10万円を見込む。
食費などの支出も切り詰めているものの、物価高で倹約は限界に近い。北電は泊原発の再稼働後に値下げする方針を示しており「停止中も多額の維持費がかかる原発を廃止し、値下げすべきだ」と切り捨てた。
旭川市の自営業の男性(72)もオール電化住宅の一軒家に妻と暮らし、今月届いた電気料金の請求書を見てがくぜんとした。暖房と給湯などを合わせて約13万円。そんなさなかでの北電の大幅値上げ申請に「暖房の設定温度を下げて、できるだけカーテンを開けて照明も消しているのに」と諦めた様子で語った。
10年近く前、灯油のボイラーの故障をきっかけにオール電化を導入。当時は冬でも1カ月の電気代は5万円ほどだったが、値上がりが続く現状に「だまされた」との思いを抱く。値上げが認められれば「来冬はもっと怖い。節約しようがない」とため息を漏らした。
比布町の農家佐藤孝夫さん(67)は今冬、家庭の電気代が月2万3千円ほど。一方、ハウス内で収穫ピークを迎えている特産の「千本ネギ」は電熱線で加温栽培しており、農業用の電気代も月3万~4万円かかる。
「夏以降もメロン用ハウスや散水ポンプでも電力が必要で、電気代はただでさえ家計を圧迫している」と嘆く。作業場の蛍光灯は発光ダイオード(LED)への切り替えを進めており「省エネ家電を買おうにも、農業用機械の更新も控えている。行政には補助や支援を求めたい」と訴えた。(小林史明、桜井則彦、仁科裕章)

節約限界、何を削れば 北電値上げ、道民「公的支援拡充を」

会員限定記事:2023年1月26日 20:45
燃料代高騰を理由に北海道電力が、一般家庭の多くが契約する「規制料金」を6月から平均約35%引き上げると経済産業省に申請した26日、節約を強いられる道民から反発が相次いだ。政府は総合経済対策の一環で2~10月検針分の電気、都市ガス料金の一部を補助するが、今回の値上げで負担軽減は「帳消し」となり、対策が終わる秋以降はさらに負担が増す。地方で普及するLPガスは補助の対象外で、物価高にあえぐ道民の間には公的支援の拡充を求める声がやまない。
「節約は限界に近く、家計のやりくりは大変だ」。4人家族で一戸建てに住む帯広市の会社員相沢理奈さん(40)は北電の値上げ申請にため息をついた。昨年12月の電気代は1万2千円で1年前より約5千円上がった。幼い子ども2人にもこまめに電気を消すよう頼んでいるが徹底は難しい。
6月の値上げが決定すれば一層の支出増を迫られる。釧路市の無職渡辺政之さん(78)は「公共性の高い電気は安くあるべきだ」と憤る。年金暮らしで暖房代を切り詰めようと重ね着で過ごす日々。「納得できない。総合経済対策の延長を」と国に求める。
規制料金の値上げは、事業者も直撃する。札幌市北区の洋菓子店「菓子の樹」の田中英雄社長(74)は「秋以降の負担増は気が重い」と嘆く。直近の電気代は月約15万円と、前年同月より5割も上昇。一時は早めにオーブンの電源を切り、余熱で菓子を焼くなど工夫したが効果は限られた。今は電気をこまめに消してしのぐぐらいしかないという。
 光熱費の高騰は電気代以外にも及ぶ。総務省の家計調査によると、道内の2人以上の世帯の昨年11月の都市ガス代は前年同期比31・6%増の2068円。総合経済対策では都市ガス代は対象だが、LPガスは価格が比較的安定していることや、小規模事業者が多く、事業者を通じた値引きが難しいことから外した。
LPガス販売道内大手いちたかガスワン(札幌)は3~5月検針分を1立方メートル当たり10円下げる独自の支援策を始める。今冬は「オール電化からガス併用に切り替えられないか」との声も寄せられているという。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(59)は「高齢者や困窮家庭に補助を集中するべきだ」と提言する。(水野薫、菊池圭祐、麻植文佳)

節電もう限界、北電値上げに道民悲鳴 物価高に追い打ち

会員限定記事:2022年12月22日 20:46(12月23日 07:51更新)
北海道電力が一般家庭の多くが契約する「規制料金」の値上げを表明した22日、道民から困惑や憤りの声が聞かれた。具体的な値上げ幅は示されなかったものの平均30%台半ばで調整中とみられ、打撃の大きさに戸惑う人も。食品など多くの物価が上がる中、暮らしに欠かせない電気料金の値上げは、特に年金暮らしの高齢者や困窮家庭に大きな影響を与えそうだ。
「年金暮らしなのですでにできる限り節電している。食品など何でも値上がりする中、これ以上切り詰めたら健康を害してしまう」
札幌市内で1人暮らしをする和田かおるさん(75)はため息をついた。家事をする午前中はテレビを消すなど、節電を続けている。友人が北電から新電力に切り替えたが電気代は下がらなかったと聞き、北電との契約は続けるつもりだ。
札幌市東区の無職男性(51)は病気のため働けず、毎月20万円弱の生活保護で妻と2人で暮らす。発光ダイオード(LED)電球を使うなど節電に努めてきたが「自宅はオール電化でこれ以上節電しようがない。電気代がここまで上がってしまったことを考えると、原発再稼働を検討しても良いのでは」と話した。
困窮者を支援する市民団体「北海道生活と健康を守る会連合会」(札幌)の細川久美子副会長は、2013年からの生活保護費引き下げで、夜も電気をつけず真っ暗な部屋で過ごす人を見てきたという。「電気は生活に欠かせないもの。値上げがどうしても必要なら、行政が困窮者に補助をする必要がある」と強調した。
実際の値上げは春ごろとみられ、何かと物入りの年度初めと重なる。困窮世帯に食料を届けるNPO法人フードバンクイコロさっぽろ(札幌市東区)の片岡有喜子理事長は「電気代が上がったからろうそくをともして生活するというわけにいかない。ひとり親家庭などからの食料支援を求める声は、これまで以上に増えるのではないか」とみる。
衝撃は事業者にも広がる。22年11月中間連結決算で水道光熱費が前年同期比23億円増と膨らんだドラッグストア大手のツルハホールディングス(札幌)の担当者は「これ以上の値上げは厳しい」。社員の作業スペースや冷凍ケースの照明を間引くなどして節電しているが「店内を暗くするわけにいかない。企業努力はほぼ限界だ」と嘆いた。
学校給食用のパンや米飯を手掛ける道央食糧供給(旭川)の伊原潤司社長は「電気代は10月までの1年間でも5割上がった。給食を止めてはいけないという使命感でやっているが、これ以上圧迫されたらどうしたらいいのか」と訴えた。(麻植文佳、権藤泉)