泊原発「基準地震動」また決定持ち越し

北海道新聞記事

泊原発「基準地震動」また決定持ち越し 

規制委、北電に苦言相次ぐ

2023年2月24日 20:33(2月24日 21:46更新)
原子力規制委員会は24日、北海道電力泊原発(後志管内泊村)の再稼働に向けた審査会合を開き、原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」について審議した。規制委は北電の検討内容が不十分であるとし、昨年10月の前回会合に引き続き、決定を持ち越した。北電は新たな審査スケジュールも提示し、他の審査項目を含む全体の説明終了時期を従来の9月末から12月末に見直すと説明。規制委からは工程管理のずさんさなど、北電の対応に苦言が相次いだ。
北電は規制委の前回会合の指摘を踏まえ、泊原発周辺の活断層が地震を引き起こした場合や全国で過去に発生した地震に基づく計算モデル「標準応答スペクトル」を考慮した場合など、計20種類の基準地震動を示した。規制委は北電が今回、基準地震動に選ばなかった複数の地震動が施設に多大な影響をもたらす可能性を否定できないとして、再考を要請。審議を続けることとした。
また、北電は新たな審査スケジュールを提示。審査の遅れを受け、津波対策の目安となる基準津波(想定される津波の最大値)の説明を8月中旬、原発に影響をもたらす可能性のある火山活動に関する評価の説明を11月上旬に終えることなどを説明。従来よりそれぞれ半年程度遅れる見通しとなった。これに対し、規制委は「審議を行うための資料の作り込みが十分でないために会合回数が増えるという、効率の悪い進め方になっている」と指摘。その上で「回答も具体性に乏しい。説明者を別途待機させるなど、この場で一定の説明ができる態勢にしないと時間ばかりかかる」と苦言を呈した。
会合終了後、規制委事務局の原子力規制庁幹部は「北電には同じ事を繰り返し言い続けているが、成長していない。12月の説明終了も厳しいだろう」と懐疑的な見方を示した。(土屋航、堀田昭一)
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<北海道新聞社説>北電不正閲覧 発送電分離が骨抜きだ

2023年2月18日 05:00(2月18日 17:52更新)
北海道電力の社員が権限がないのに経済産業省のシステムに入り、再生可能エネルギーの発電事業者の情報を長年にわたり不正閲覧していたことが分かった。
閲覧可能な情報は道内で約7万6千件に及ぶ。経産省の発表では大手電力10社すべてが同じ不正を行っていた。業界ぐるみと見られても仕方がないだろう。国の電力自由化の一環で2020年度に大手電力から送配電機能が法的分離された。再エネなど新規参入業者が接続で不利な扱いを受けぬよう中立性を保つためだ。北電も北海道電力ネットワークを分離独立させた。だが100%子会社で人事交流もある。今回も北電ネットワークのアクセス権限を北電社員が悪用していた。
これでは発送電分離が骨抜きとなる。国は両社の資本関係を認めない完全な分離を進めるべきだ。北電によると不正閲覧は18年12月から先月まで4年以上行われていた。7人の社員が不正アクセスに関与したという。北電と再エネ業者は発電・小売りで競争関係にあるため、情報閲覧は送配電会社である北電ネットワークにのみ認められる。
北電は再エネの固定価格買取制度に関わる発電出力情報を得るためのアクセスで、各業者に問い合わせるところを「業務の効率性を優先」してしまったという。不正の認識が薄いのではないか。組織的な指示はなかったのか、情報収集目的の意図があったのかなどの疑念も消えない。
背景に地域独占時代のおごりがあるなら問題の根は深い。過去に北電は泊原発プルサーマル計画を巡るシンポジウムで社員による「やらせ」が問題化した。当時のように組織性の有無を第三者組織が解明する必要があろう。
大手電力ではこれとは別に、送配電子会社が管理する新電力の顧客情報を不正閲覧していたことが東北、中部などで発覚した。関西電力は営業利用したという。親会社とはいえ競合相手への情報流出は信頼の根幹を侵す。
この件について北電は先月、不正がなかったとする調査結果を経産省に提出している。改めて徹底した再調査を求めたい。北電と北電ネットワークは同じ建物に入居する。今回の不正で分社目的である情報遮断も実質的に機能していないことが分かった。再エネの宝庫である道内には風力発電を中心に新規参入計画が相次ぐ。送配電は北電子会社でなく独立した機関が担う必要がある。