目に余る安倍元首相のフエイク

日刊ゲンダイDIGITAL 政治・社会

自民候補が連呼「立憲が政権握れば日米同盟終わる」はフェイク!

識者も「根本的に間違い」と指摘

公開日:2021/10/23 14:20 更新日:2021/10/23 16:34
予想を上回る苦戦に焦っている証拠だろう。公示直後から自民党は共産党の「閣外協力」にロックオン。脅迫めいた口調で「日米同盟」への影響を異口同音に訴える。野党が勝てば“この世の終わり”のような言いざまだが、本当か。ファクトチェックが必要だ。
野党系候補は全289選挙区の75%にあたる217選挙区で一本化。うち132選挙区で与野党一騎打ちが実現し、その6割が大接戦だ。尻に火がついた自民候補が語気を強めるのは、主に立憲と共産の共闘批判。アチコチで、「天皇制や日米同盟を巡る主張を異にする政党同士の理念なき野合」などと繰り返す。その傾向は石原伸晃元幹事長(東京8区)や桜田義孝元五輪相(千葉8区)ら野党統一の新人にリードを許す候補ほど顕著だ。
選挙を仕切る甘利幹事長も「政府の意思決定に、共産党の意思が入ってくる。自衛隊や天皇制に対する考え方が全く違う。体制選択選挙になる」と言ったほどだから、恐らく全候補に、共闘批判の“あんちょこ”でも配っているのだろう。さらに踏み込んだのが、安倍元首相だ。21日の応援演説で「日米同盟は廃止、そして自衛隊は憲法違反、これが共産党の基本的政策」と前置きして、こう断言したのだ。
「共産党の力を借りて、立憲民主党が政権を握れば日米同盟の信頼関係は失われてしまう」「(安保法制を廃止すれば)日米同盟は、その瞬間に終わりを迎えてしまう」
確かに立憲と共産などは市民連合を介して締結した共通政策で「安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止」を掲げている。この共通政策の範囲内で共産の志位委員長は「閣外協力」を、立憲の枝野代表と合意した。

■「米軍が守ってくれる」もウソ

安倍氏の言う通り「立憲が政権を握れば日米同盟は終わる」のか。日米安保条約に詳しい国際ジャーナリストの春名幹男氏に聞くと、「日米同盟の基本的な出発点を理解していない」とこう言った。
「米国は在日米軍を必要としていない。日本からお願いして駐留してもらっている。相手が嫌がることをしたら出ていかれる。安倍氏の見解はそんなところでしょうが、根本的に間違っています。米軍から見て、日本は中国とロシア、北朝鮮を牽制する上で戦略的に重要な位置にあり、広大な基地を何カ所も置ける貴重な場所です。この認識は米国の国家安全保障会議の文書にも記されており、おいそれと手放すわけがない。過去にも日本で反米的政権が誕生すると、撤退をにおわすことはありましたが、より良い条件を得るためのブラフに過ぎませんでした」
安倍元首相の野党批判は、対米隷従意識の表れだ。
安倍氏は『日本がもし外敵から攻撃を受ければ、米国の若者が血を流す』『自衛隊は少なくとも米国が攻撃されたときに血を流すことはない』と主張。集団的自衛権の行使容認の解釈改憲に突き進みましたが、安保条約では日本が攻撃を受けても、米軍はNATO条約のように『自国が攻撃された』とは見なさない。『日米で共同で対処する』旨が定められているだけで、それを安倍氏らは勝手に『必ず日本を守ってくれる』と信じ込んでいるのです。その結果、米軍の戦争に日本は基地だけでなく、人まで差し出すことになってしまいました」(春名幹男氏)
日米同盟を持ち出す野党攻撃はフェイクだ。悪質なデマに有権者はダマされてはいけない。
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安倍元首相シャカリキ全国行脚

"チルドレン"が18選挙区で落選危機

公開日:2021/10/23 14:30 更新日:2021/10/23 15:51
中盤戦に入った衆院選(31日投開票)で、安倍元首相がシャカリキだ。
29日まで地元を離れて全国行脚。当落線上にいる“身内”候補の応援に入って支持を訴えるが、効果はあるのか。
60以上の選挙区で与野党がデッドヒートを繰り広げる中、安倍氏が実質支配する最大派閥・細田派(衆院58人、参院36人)は2ケタに上る前職が対立候補に引き離され、落選危機に瀕している。3分の1は、安倍チルドレンの“魔の3回生”だ。

どこまでいっても個利個略

安倍氏は体調悪化で2度も政権をブン投げたくせに、とにかく精力的だ。全国を飛び回り、1日数カ所で遊説。山口を発った21日は義家弘介元文科副大臣(神奈川16区)の陣営などをテコ入れ。23日も3回生の池田佳隆文科副大臣(愛知3区)らの選挙区に入るが、いずれも劣勢が伝えられている。ちなみにこの間、元政策秘書の初村滝一郎氏(長崎1区)の総決起集会にも足を運んでいる。
「安倍元総理がなりふり構わず動き回っているのは、衆院選後を見据えてのことです。年内に派閥に正式に戻り、満を持して会長に就任。そして、細田派から安倍派へ衣替え。最大派閥の領袖として華々しく安倍時代をスタートさせるためには、所属議員を1人も取りこぼしたくないのでしょう」(自民党関係者)
子飼いが駆逐されれば、キングメーカーのフリさえできなくなる。どこまでいっても個利個略だ。
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安倍元首相「立憲・共産なら悪夢の時代に逆戻り」に反発の声

枝野氏地元での演説が“ブーメラン”に

公開日:2021/10/22 15:40 更新日:2021/10/22 16:54
<あなたの政権よりはよっぽどよかった>
<安倍さん、菅さんは悪夢どころか、悪魔そのものだった>
ネット上には、かなり辛辣な書き込みが目立つ。衆院選の候補者応援のため、21日、立憲民主党の枝野幸男代表(57)の地盤(埼玉5区)で、街頭演説した自民党の安倍晋三元首相(67)に対する反発の声が広がっている。この日、JR大宮駅近くで安倍氏はこう声を張り上げていた。
「私たちは立憲民主党と共産党に負けるわけには行かないんです。この組み合わせに負けたら、日本はあの悪夢の様な時代に逆戻りしてしまいます」安倍氏は過去の国政選挙でも複数回、枝野代表の地元で街頭演説している。当時は「民主党の枝野さん」とわざと言い間違え、続けて、「毎回、党が変わるから覚えられない」と言って聴衆を沸かすのが常套手段だった。今回は決め台詞を「立憲・共産=悪夢の時代」に変え、「どうだ」と言わんばかりの態度だったが、聴衆ウケは今一つ。むしろ言えば言うほど反感を買っているようだ。
<二度も政権を放り投げたあなたが他党のことを批判できるのですか>
<ロシアにはお金も北方領土も取られた。拉致被害者も結局、1人も戻ってこない。これが悪夢じゃなくて何>
<コロナで大変だよ。生活が。アベノマスクなんて何の役にも立たなかったよ。反省ないの?>
<アベノミクスで庶民生活が豊かになるんじゃなかったの?税金は上がって、給料減っていますが……。自民公明の組み合わせの方が悪魔という現実>
これでは安倍氏に応援を依頼した候補者からも「悪夢だ」と悲鳴が上がりそうだ。
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政界引退する大島衆院議長が語る民主主義の根幹

安倍政権に反省促す所感<引退議員に聞く㊤>

8年9カ月続いた「安倍・菅政権」。国会の議論の前提となる資料の隠蔽や改ざんが相次ぎ、異論に耳を傾けない姿勢も相まって、少数意見を尊重しながら熟議する民主主義の根幹が揺らいだ。憲法で国権の最高機関と定められた国会の責任者は、議会や政治のありようをどう見ていたのか。次の衆院選に立候補せず、政界を引退する衆院の大島理森議長(75)に聞いた。
議員生活を振り返って印象に残る出来事は。
「(1990年の)第2次海部内閣で官房副長官を務め、イラクのクウェート侵攻や(貿易不均衡の是正を目指した)日米構造協議などの課題の中で政治のダイナミズム、権力の怖さと維持する難しさを経験したことだ。(2009年からの)野党時代に自民党の幹事長や副総裁として政権奪還に努力したことや、上皇さまの退位を巡り、衆参両院の正副議長で国会としての見解を取りまとめる作業をしたことも思い出深い」
議長の在職は6年半。心掛けていたことは。
「国会は国権の最高機関で、内閣の選任や立法・予算の成立、行政監視機能を担っている。一方で政権を目指す権力闘争の場でもある。できるだけ公正、公平な舞台をつくるのが議長の役割だと自問自答しながらやってきた」
森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんなどを受け、18年に安倍政権に反省と改善を促す異例の議長所感を出した。
「憲法には『内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う』とある。捏造ねつぞう的、虚偽的な情報が報告されれば立法府の判断を誤らせる恐れがある。今後もそれがまかり通れば日本の民主主義の根幹を揺るがす問題だと感じた」
森友・加計問題や「桜を見る会」で野党が求める安倍晋三元首相らの国会招致に与党は消極的だった。改善すべき点はないか。
「国会には権力闘争の側面もあり、これを無視して議論するのは難しい。与野党の激しいやりとりを国民が鋭く見抜き、選挙で判断するのが民主主義だ。与党も国会の活性化のため、行政監視の重要性は忘れないでほしい」
海外では独裁色の強いリーダーが増え、民主主義の危機が叫ばれている。
「コロナ禍で世論の一部に強いリーダーシップを求める意見もある。だが、歴史を見れば権威主義の政治、独裁政治が生まれてくるわけで、警戒しないといけない。民主主義は多様な意見を発露させ、議論し、合意点をつくるもの。手間暇はかかるが、国の運営には最も良いと確信している」
次期衆院選に向けて有権者に訴えたいことは。
「一番心配しているのは投票率の低さ。投票は民主主義を支える基本的な行為だ。政治は自分たちのものだという認識を持って、主体的に1票を投じてほしい」(聞き手・川田篤志)

おおしま・ただもり 1946年、青森県八戸市生まれ。毎日新聞社員、青森県議を経て、1983年衆院選に自民党から立候補して初当選。12期目。青森2区。文相や農相、自民党幹事長などを歴任。2015年4月から衆院議長を務め、通算在職日数は歴代最長の2335日(13日時点)。