「雇われママの役目とは」

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

「雇われママの役目とは」

次の総理は岸田文雄さんになった。この原稿を書いているのは10月3日。すでに新しい自民党の四役は決まった。幹事長は甘利明税調会長、政調会長には高市早苗前総務相、総務会長には福田達夫衆院議員、選対委員長には遠藤利明元五輪相が就任することになった。
党四役といえば、党運営の中心だ。岸田自民党総裁は、飲み屋に例えると、オーナーママじゃなく、雇われママみたいなもんなのか。せっかく総裁になったのに、岸田さんがトップである岸田派の議員が入ってないわさ。雇われママって、一介のホステスさんと同じだからね。ママと呼ばれることで、責任を負う雑務が増えるだけ。お店の大きな決め事は、オーナーの意見が大事だ。ま、なんかあったら辞めるってのが仕事かも。
岸田さんは就任後初の会見で、
「私、岸田文雄の特技は、人の話をよく聞くということであります。ぜひ山積している課題に対して、できるだけ多くの国民の皆さんの声を聞かせていただきながら、一つ一つ丁寧に答えを出していきたいと思っています。丁寧で、そして寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたいと考えております」
といっていた。はじめから嘘(うそ)くさい。ほんとうにわかってる? 本物のオーナーは国民だって?なら、この人事はないわ。なんで賄賂の疑惑があって説明責任も果たさず逃げた甘利氏を、党の金を握る要職に就かせたんだ? こんな男に、税金も含む大金をまかすってどういうことよ?
『アベスガ政治』で数々の不正、権力の私物化など、腐敗が露呈した。多くの人が襟を正せと顔をしかめている最中、なぜ『アベスガ政治』でナンバー2の座、副総理だった麻生氏を副総裁に?
ネオナチ崇拝者と仲良しの高市氏、政治資金規正法違反? 大丈夫、データの入ってるパソコン、ドリルで壊しちゃうからの小渕ドリル優子氏、下着ドロ? それはどうかわからないけど有権者に香典は渡してましたの高木氏、地味そうでウルトラライトの松野氏。は?今回の赤字五輪の功績?遠藤氏。総裁選、若手の味方のふりして裏切ったんじゃないかの福田氏。この人事を見て、喧嘩(けんか)を売られているんじゃないかと思った人は少なくないだろう。
今回の開店は、本当に雇われママが代わっただけだった。店のリニューアルにもなってない。総裁選でもキングメーカーぶりを発揮した、安倍さんがオーナーなんでしょ? その安倍さんの『気が向いたらまた店をやるかもなぁ』って気持ちに忖度(そんたく)し、新しいこともせず、潰さないよう、ただ店を開けるのが、岸田ママの役目かな?
※週刊朝日  2021年10月22日号