旧統一教会について 弁護士らが国に「解散命令」請求

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2022年10月11日 18時37分

旧統一教会について 弁護士らが国に「解散命令」請求申し入れ

「世界平和統一家庭連合」旧統一教会について、弁護士らが国に対し、宗教法人法に基づく「解散命令」を請求するよう申し入れを行いました。申し入れを行ったのは、元信者らを支援している「全国霊感商法対策弁護士連絡会」です。
会見で川井康雄弁護士は「旧統一教会は、正体隠しによる伝道を行い、裁判で献金に関する違法行為が各地で認められている」と述べ文部科学大臣や法務大臣などに対し、宗教法人の解散命令を速やかに請求するよう求めたことを明らかにしました。
宗教法人の解散命令は所轄庁などの請求により、裁判所が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」などを理由に命じるものです。
川井弁護士は「民事の判決では社会的相当性を逸脱していると繰り返し教会の使用者責任が問われているので、解散命令の根拠となる法令違反にあたる。旧統一教会は『教会改革』の方針を発表したが過去の被害に対する言及が全くないなど信用できず、自浄作用は期待できない」と述べ、解散命令の必要性を訴えました。
文化庁の担当者は「申し入れの文書が届いていないので、コメントできない」としています。

宗教法人の「解散命令」とは

宗教法人の「解散命令」は、所轄庁や利害関係人などの請求により、裁判所が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」などを理由に命じるものです。命令が出されると宗教法人は解散となり、固定資産税の非課税など、税制上の優遇措置が受けられなくなりますが、任意の宗教団体としては活動を続けられます。
宗教法人の解散命令について、憲法学が専門の九州大学の南野森教授は「宗教法人法における解散命令の手続きは、裁判所が国側、文科大臣の主張と、相手側、旧統一教会の両方の主張を聞いて最終的に判断することになる。解散命令は、宗教法人格をなくすもので、個人の信教の自由を侵害することにならないとオウム真理教の解散命令の際に最高裁判決が示している。一方で、解散命令が出されると、信仰をしている人たちにさまざまな不都合や不利益が生じることは容易に想像できるので、国や裁判所としては慎重に判断しなければならないが、必要があればちゅうちょせずに進める態度が必要だと思う」と述べました。そのうえで「宗教法人法の解散命令の要件は非常に抽象的にしか書いておらず、国が請求して裁判所が解散を命じたのはこれまで2例しかなく、最後に示されたのは20年前になる。過去の基準をそのまま当てはめるのではなく新しい問題として再検討されるべきだと思う」と話していました。

過去の宗教法人解散命令は2件

これまでに裁判所が宗教法人法が定める「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」を理由に解散命令を出したのは、「オウム真理教」と「明覚寺」の2つの宗教団体です。このうちオウム真理教については、東京地方検察庁と東京都からの請求を受けて、1995年に東京地方裁判所が解散命令を出しました。
東京高等裁判所も認めたため、教団側は決定を不服として最高裁判所に特別抗告しましたが、1996年1月、「大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画したうえ、多数の信者を動員し、計画的、組織的にサリンを生成した。法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」などとして退けました。
また、1999年には和歌山県に本部があった宗教法人「明覚寺」について、文化庁が解散命令を請求しました。
3年後の2002年1月、和歌山地方裁判所は、教団の関係者が霊能があるように装って相談に訪れた人から現金をだましとっていたとして「被害件数が極めて多く、被害額も多額に及んでいて、著しく公共の福祉を害するものであることは明らかだ」と指摘しました。さらに「組織的に詐欺行為を行い、宗教団体の目的を著しく逸脱している」として、請求を認める決定を出しました。
こちらも最高裁まで争われましたが、この年の12月に特別抗告が退けられ、確定しています。