「安倍国葬」は明らかに違憲!

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著者:小林節慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

ここがおかしい 小林節が斬る!

「安倍国葬」は明らかに違憲!

憲法をないがしろにする自民党の政治手法

公開日:2022/08/09 06:00 更新日:2022/08/09 06:00
「安倍国葬」が違憲であることは否定しようがない。国葬とは国の意思と名と負担で行われる最も格が高い追悼式で、歴史的にもめったにあることではない。だから、国権の最高機関・国会が制定した法律上の根拠があって行われるべきものである。現在一つだけ法律で決められている国葬は天皇の大喪で皇室典範25条に明記されている。そして、それを内閣が執行する手続法が内閣府設置法4条である。しかし、元首相の国葬には根拠法がない。安倍晋三氏の家族葬は済んでおり、公的な追悼式は急ぐ必要はない。だから、国会で堂々と審議して法律を制定してから挙行することが、憲法が命ずる「安倍国葬」の手順である。にもかかわらず、岸田政権は、憲法尊重擁護義務を負う内閣(99条)が、最高法である憲法(98条)の上に立つという矛盾を犯した。
思えば、これは安倍内閣が確立した政治手法である。あの平和安全法制(戦争法)を制定したやり方である。憲法9条2項は、国際法上の「戦争」の手段である「軍隊」と「交戦権」を明文で否定している。だから、わが国は「海外派兵」が不可欠な「戦争」はできないとされてきた。これが憲法の「原意」で一貫した政府見解である。にもかかわらず、安倍政権は閣議決定で政府見解を変更して戦争法の制定を主導した。
憲法25条はわが国に対して「福祉国家」であることを命じている。にもかかわらず、自民党政権は、「新自由主義」と称する弱肉強食資本主義政策を推進して、福祉国家を破壊してしまった。
自民党政権は、官僚人事に直接介入して「忖度」官僚を重用して、法令を曲げて国費を使い、権力者の友人を優遇させた。「森友、加計、桜を見る会、東北新社」事件である。しかも、官僚たちが公的な情報を隠蔽したために、これらの権力者による犯罪は立件されていない。
以上、自民党政権は法治主義(法律に従った権力の行使)、法の支配(憲法の優位性)を露骨に踏みにじり、恬として恥じていない。
こんな自民党に「改憲」を語る資格がないことは明らかである。