ワクチン3回目接種の効果

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ワクチン3回目接種の効果は慌てても「期待薄」

ウイルスの歴史から改めて学ぶこと

公開日:2022/01/21 06:00 更新日:2022/01/21 06:00
オミクロン株の全国感染者が急拡大し、過去最多の1日4万人を超えた。それに伴い、政府は新型コロナウイルスワクチンの65歳以上の3回目接種(ブースター接種)の前倒しを進めている。
厚労省は当初、原則として2回目から8カ月後を接種のめどとしていたが、今回、一般の高齢者は6カ月、64歳以下の現役世代は7カ月の間隔に前倒しとなった。自衛隊による大規模接種会場での接種は、東京で1月31日、大阪では2月7日からスタートする。
しかし皮肉なことに、オミクロン株の感染拡大はすでにピークに達する状況にある。昨年12月半ば以降に新規感染者数が急増した英国では、年明けには連日15万人以上のペースで市中感染が進んでいたが、今月19日にジョンソン首相が、「オミクロン株の感染ピークが過ぎた」と報告。法的な行動規制を順次、ほぼ撤廃することを決めている。また、昨年12月から新規感染者数が拡大した米国ニューヨーク州も同31日を境に減少傾向となっている。いずれもおよそ1カ月後にピークアウトを迎えている。さらに、ワクチン接種が進むイスラエルの研究によると、米ファイザーや独ビオンテック製の新型コロナウイルスワクチンを4回接種しても、「オミクロン変異株の感染を十分予防できない」と報告されている。となると、慌てて3回目を接種するのも、“いまさら感”がある。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「日本でオミクロン株による感染者数が拡大しても、デルタ株の時に比べて重症化しないのはワクチン接種の効果もあるとは思います。しかし、ウイルスの歴史を見れば、2~3年で“季節性のウイルス”に変わっています。新型コロナウイルスも変異を繰り返し、その時を迎えています。そもそも、オミクロン株はデルタ株と比べて2回接種者が多く感染しており、世界のデータからもワクチン接種したから防げるものでもない。それにすでにオミクロン株はピークに達していますからね。強制するほどの効果は期待できません。今後は、インフルエンザワクチンと同様、毎年1回打つので十分と考えます」
岸田首相は1月18日、「ワクチン・検査パッケージ」を一時停止すると表明した。結局、ワクチン接種済みの人が相次いでオミクロン株に感染していることから、感染者数の拡大防止にワクチン接種証明が意味をなさないと言っているようなもの。副反応に不安のある人は前倒しを急がず、自分のペースで考えてもいいのかもしれない。