カジノ推進派は詐欺師

ここがおかしい 小林節が斬る!

小林節 慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著)

カジノで景気を語る政治家はまるで権力を握った“詐欺師”だ

公開日:2019/12/10 06:00 更新日:2019/12/10 06:00

刑法は賭博(つまり、財物を賭けて偶然性が支配する勝負)を行うことを犯罪だとしている(185条)。それは、すべての人間の本性に潜む射幸心(偶然の利得を期待する浅はかな心)が人間を廃人に転落させることが、公知の事実だからである。つまり、賭博は麻薬と同様に、人間にとって絶対悪である。にもかかわらず、「戦災からの復興」などと口実を立てて、「公的に管理された」ギャンブルは例外的に合法化するという方便がまかり通り、わが国は既に世界でも、まれに見るギャンブル大国である。冷静に考えてみれば、ギャンブルは本来的に国民大衆の味方であるはずがない。例えばカジノというビジネスは、その賭け金の総額からまずその運営経費と行政への上納金を天引きした残りを客に配当する以上、賭けた人々は全体として初めから「食い物にされる」ようになっている。
 だから、そうして庶民から巻き上げた金で「景気が良くなる」「歳入も上がる」などという絵空事は、実は、単純明白に、庶民からバクチで搾り取った金で特定の業者と行政が潤い、その用心棒のような族議員への政治献金が増えるだけのことであろう。
しかも、今回も言い訳のように「依存症対策」を充実するなどとしている。ギャンブル依存症は薬物中毒と同じで、本人は「悪い」と十分に分かっていながらも抜け出せないから中毒なのである。その結果、生活が破綻して家庭まで破壊されてしまう。依存症対策の唯一最良の選択肢は、依存症患者を生まないこと、つまり合法ギャンブルなどをつくらないことに尽きる。
ここ数年「アベノミクス」などとはやしてきたが、庶民には経済が上向いた実感はない。揚げ句の果てが「統合リゾート(要するにカジノというギャンブル)」で景気を浮揚させると言い出した政治は、まるで権力を握った詐欺師のようである。事柄の本質として、ギャンブルは何も生産しない以上、それが経済の牽引車になどなれるはずがない。庶民の懐から金をかすめ取り病人を増やし特定業者と特定権力者を利するカジノには断固反対すべきである。今からでも遅くはない。

My Comment

安倍内閣のカジノ誘致の最有力地として、北海道を考えていることは周知の事実であったことは、先ごろその判断を若い鈴木知事に「毒饅頭」を預けて、国政に転身した無責任高橋前知事の、誘致見送りに残念発言でも明らかである。口を開けば、北海道への観光客倍増を御旗に、裏でカジノ誘致を画策していたことは明白である。菅官房長官のお気に入りといわれる鈴木知事を送り込んで、北海道にカジノを作ろうとする姿勢は明らかである。
2016年12月、統合型リゾート(IR)整備推進法案、通称「カジノ法案」が成立したのち、2017年1月20日、第45代アメリカ合衆国大統領に就任するやいなや、調査報道で知られる米非営利メディア「プロパブリカ」は2018年10月10日、ドナルド・トランプ米大統領が自身の大口献金者であるユダヤ系のカジノ王、シェルドン・アデルソンが経営するカジノ大手の日本参入を求めて、2017年2月に安倍晋三首相に口利きをしたと報じた。
まさに、トランプの大口献金者のカジノ王に日本への投資をエサに米国追従姿勢を示し、トランプに取り入った安倍の魂胆が見え見えである。
そんなにしてまで金もうけをむさぼる日本人とはどんな人種か?
いうこととやってることがこれほど詐欺まがいの政治を見たことがない。
貴重なものつくり技術が海外へ流出し、どこの国でも製造が可能になり、国際競争力は人件費の競争となってしまった。
唯一、自動車産業や他国ではまねのできない技術を固守した企業のみが生き残った。しかし、工業製品は日々の新製品開発をなくしては、いずれ淘汰される運命にある。今後日本経済が右肩上がりに向上することなどありえない。今後は一次産業を中心とした、国内循環型企業のみが生き残る。
何より、生活の質は贅沢な工業製品に囲まれて暮らすことではない。
少々不便であっても、食料が自給でき、エネルギーさえ自前で作り出せる時代になった日本は、海外輸出産業よりも国内流通企業を優遇すべきである。その意味で、こんな射幸心をあおる政治の姿勢は、金の亡者ばかりを作り出し、日本人の勤勉努力の資質や伝統的文化さえも失われていく何の魅力もない国に成り下がってしまう。
北海道にはカジノは絶対作らせない。しっかり本業で持続可能な国とする努力を継続することこそ未来が開ける。