「温暖化危機説はフェイク」

産経新聞

群馬「正論」懇話会 杉山氏講演

2021.12.07 21:09
前橋市の前橋商工会議所会館で6日に開かれた群馬「正論」懇話会(会長=田中善信・田中・二階堂法律事務所長)の第57回講演会。「『CO2ゼロ』一直線は亡国の危機」と題し、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、杉山大志氏が講演した。杉山氏は「温暖化危機説はフェイクニュースだ」と断じ、CO2(二酸化炭素)削減の世界的潮流は中国を利するだけと喝破。来場者は刺激に満ちた約1時間半の講演に熱心に耳を傾け、活発な質疑応答も行われた。
杉山氏は「CO2濃度は確かに増えているものの、気温上昇は100年でわずか0・7度にとどまる」とし、地球温暖化を背景に、災害が頻発しているという〝常識〟に反論を展開。スライドで示した気象庁の公開データ、グラフなどをもとに、「台風や大雨などの激甚化など起きていない」と指摘。自然災害が頻発しているとの報道を真正面から否定した上で、「温暖化危機説はフェイクニュースだ」と断じた。
さらに「2020年にはタンザニアのキリマンジャロから雪が消える」など、地球温暖化の悪影響を誇張する過去の予測も紹介し、「いずれも大はずれだった」と述べると、会場からは苦笑が漏れ聞こえた。杉山氏はその上で、2050(令和32)年にCO2など温室効果ガス排出量実質ゼロをめざす政府目標について、「極端な対策は要らないし、できない」と疑義を唱えた。
例えば、政府はCO2削減のため火力発電などに代わって太陽光発電など再生可能エネルギーの大量導入を進めてきた。だが杉山氏は「現状でも年間2・4兆円の賦課金が国民負担になっている。非常に効率の悪いエネルギーだ」と述べ、国民生活に不利に働きかねないとの懸念を語った。
一方、11月には英国のグラスゴーで、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催。2050年までに国内の温室効果ガス排出量実質ゼロを達成する目標を日本や欧米各国が掲げた。国際社会がCO2削減へ向かう中で、杉山氏は最大の排出国・中国が人権や領土などの問題への国際社会の関与を減らすため、「CO2削減への協力を政治的な取引材料とするだろう」と指摘。太陽光発電や電気自動車(EV)などへの巨額投資は、そうした産業で先行する中国が潤う結果となり、「中国にとってCO2ゼロは利点ずくめだ」と述べた。
講演に耳を傾けた県産経会の関口賢一会長=高崎市=は「データを見ると、海面上昇による島嶼(とうしょ)の水没などの話がウソだとはっきり分かる。本当のことを知らない人が多すぎる。マスコミがもっと知らせてほしい」。また、前橋市の川崎弘さんは「講演で聞いたことが真実なら、世界を救うためにもっと大きな声を出さなければ。学者たちはぜひ真剣に取り組んでもらいたい」と語った。(柳原一哉)

すぎやま・たいし 昭和44年、北海道出身。東大理学部、同大学院物理工学修士修了後の平成5年、電力中央研究所に入所。29年にキヤノングローバル戦略研究所上席研究員。31年1月より現職。専門はエネルギー政策や温暖化問題。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)メンバーのほか各省庁の専門委員を歴任。急進的運動と化した「CO2排出ゼロ」のうねりに警鐘を鳴らし、論文や「『脱炭素』は嘘だらけ」など著書多数。