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参考文献

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現代ビジネス

あまりに政治利権化しすぎた地球温暖化論議の「不都合な真実」

川口 マーン 惠美作家
プロフィール
大阪生まれ。日本大学芸術学部音楽学科卒業。85年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。シュトゥットガルト在住。90年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年『住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞受賞。その他、『母親に向かない人の子育て術』(文春新書)、『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮選書) 、『ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?』(祥伝社新書)など著書多数。最新刊は『世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン』(講談社+α新書)。2011年4月より、拓殖大学日本文化研究所客員教授。

そろそろ科学的にまっとうな環境政策を

ホッケースティック曲線とは何か

2001年、IPCCの第3次評価報告で、マイケル・マン(米ペンシルバニア州立大学教授・気象学)が作成した「ホッケースティック曲線」が、気候温暖化が起こっている証拠として大々的に取り上げられた。なぜ「ホッケースティック」かというと、このグラフによれば、10世紀から19世紀の終わりまで地球の気温はほとんど変化せず、1900年ごろから突然上昇する。だから、そのグラフ曲線が、ホッケースティックを横に寝かせたように見えるのだ。ただ、地球の温度が10世紀から19世紀まで変わらなかったというのは明らかな嘘か、良くても勘違いだろう。16世紀から18世紀まで異常な寒冷期があったことは古気候学ではすでに知られている。
IPCCというのは、日本語の正式名は「気候変動に関する政府間パネル」で、気象庁のホームページによれば、以下のようになっている。「人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織」
つまり、IPCCは国連に属する組織であり、世界の気候の専門家が集まっている。なのに、なぜかこのような誤った報告が取り上げられてしまったのだ。
物理学者で、温暖化問題の第一人者杉山大志氏によれば、「10世紀から14世紀にかけてはバイキングが活動する『中世温暖期』があり、また17世紀から19世紀にかけては世界各地で氷河が発達する『小氷期』があったことが古気候学者に広く知られていた」という。だから当然、マンのホッケースティック曲線は激しい反論を呼び起こし、結局、IPCCもその後、中世の北半球は今と同じくらい暑かったことを、はっきりと認めた。ただIPCCは、「2001年報告が誤りだったとは言わずに、(第4次評価報告では)淡々と違う図が報告された」と杉山氏は、著書『地球温暖化問題の探究』に記している。つまり、ホッケースティック論は静かに消えた。そして、消えたにもかかわらず、一般の人々の頭の中にはこの図だけが鮮明に残った。これが名だたる科学者たちの揃った世界的機関のやることだろうか?

証拠資料も出せない研究なのに

ところが、静かにフェードアウトしていたはずのホッケースティック論が、2019年になって、またちょっと話題になった。マンのホッケースティック曲線は改ざんだと声高に批判したカナダの地理学者ティム・ボール教授を、2011年、マンが名誉毀損で訴えていた裁判が、不起訴となったからだ。
正確にいうなら、時間切れになったのだが、その理由は、裁判所がマンに提出を求めていたホッケースティック曲線の根拠となった資料を、マンが出さなかったため。マンは、他の仕事で忙しいという理由をあげたが、本当は、ボールが1938年生まれで高齢のため、時間稼ぎをしていたとも言われる。裁判官は、マンの態度を許しがたいものだと思っていたと伝えられるが、結局、マンに訴訟費用の全額支払いを命じ、この件は去年の9月に不起訴となった。つまり、マンのホッケースティック理論は、証拠の資料も出せないような研究だということなのだが、こともあろうにマンはそれを、あたかも自分の勝訴のように言いふらし、それどころか、すぐさま目くらましに出た。
マンは、政治も世論も自分の味方だと確信しているらしい。
確かに、2019年12月、新しくEUの欧州委員長となったフォン・デア・ライエン氏(ドイツ人)は、就任早々「気候非常事態」を宣言し、CO2削減対策をEUの一番重要な政策の一つに入れた。メルケル首相もことあるごとに、人間が産業活動で排出したCO2が地球の気温を上げたと言っている。それどころか、グレタ・トゥンベリの「このままでは10年後に取り返しのつかない事態になり、地球が滅びる」という主張にも、多くの政治家は異議を差し挟まない。しかし、CO2排出量と温暖化は無関係ではないが、それについては大きな誤差を持ってしか言えないとする学者は多い。ホッケースティック論争で不明瞭な態度をとり続けたIPCCだが、彼らとて、地球温暖化予測に関する大きな不確実性は認めている。

政治利権化しすぎたCO2論議

昨年は、オランダ人のGuus Berkhout教授(デルフト大学)が、国連のグテレス総長に宛てて、気候変動による地球の危機など起こっていないということを訴えた公開書簡(9月23日付)を出した。そこには、「現在の国際政治で広く使われている気候モデルは、その目的のためには不適切なものである。このような未熟なモデルに基づいて、何兆ものお金を無駄にすることは、間違いであり、賢明でない」と記され、多くの科学者が署名している。
https://www.technocracy.news/climate-scientists-write-to-un-there-is-no-climate-emergency/
気候の変動は20世紀の前半(1910~40年)にも起きている。原因はわからない。自然変動だと言われているが、自然変動の原因も、太陽放射、エルニーニョなどいくつもあるからだ。米ウィスコンシン大学ミルウォーキー大学の気象学のAnastasios Tsonis教授は、ここ100年余りの気候を次のように分けている。
第1期 1880年から1910年まで:寒冷期
第2期 1910年から1943年まで:急激な温暖化
第3期 1943年から1976年まで:緩慢な寒冷化
第4期 1976年から1998年まで:急激な温暖化
第5期 1998年以降:ほぼ停滞
もう少し長期で見ると、15~19世の小さな氷河期にはロンドンのテムズ川がよく氷結したという記録もある。ただ、もっと長期で見ると、2万年前から現在にかけての氷期から間氷期への移行で地球の温度は大幅に上がり、最近の1万年程度は安定しているという。つまり、人間が、「何だかこの頃、毎年暑くなっている」と感じたからといって、地球の温度変化を察知しているなどとは言えない。ましてや、少々CO2を減らしたとて、おそらく地球の温度には影響しないのではないか。ただ問題は、EUの為政者も、環境保護者も、そんなことは百も承知でやっているらしいことだ。
アメリカでCO2人為説を盛んに唱えていたのはヒラリー・クリントンだった。そして今は、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長(ドイツ人)。彼女の虎の子「グリーン・ディール」は、ここのところコロナ騒動で霞んでしまったため、最近、また、皆にそれを思い出させようと活動が盛んになってきた。現在のCO2論議は、あまりにも政治的だ。政治が介入すると、研究結果まで偏ってくるという。政治が望まない研究結果を出しても、学会誌にも取り上げられず、そのあとの研究費も期待できないからだ。
一方、環境問題は今後、発展途上国の工業化につれて、どんどん深刻になっていくだろう。しかし、ガソリン車を減らし、肉を断食して地球の温度を下げようという話には、私はついていけない。CO2削減を利権にするのはもうやめて、そろそろ本当の環境政策を科学的にやってほしいと思う。
興味のある方は下記を参照ください
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75043?imp=0

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新中間処理施設の建設についての陳情書

陳情者 帯広市自由が丘6丁目4-12 佐藤隆則 他8名

帯広市議会議長 有城正憲 様

陳情の主旨

昨年12月20日新中間処理施設についての計画書が発表になりましたが、この計画について多々の疑問点があり、以下の点について真偽をただすとともに、建設計画について慎重な審議をお願いいたします。
1. 一般の行政事務と異なり「中間処理施設」の建設は、実際にごみ処理に係る住民の声を聞くべきなのに、2017年7月に設立された「新中間処理施設整備検討会議」や2018年8月に設立された「新中間処理施設有識者会議」の規約のどこにも、住民・市民の声を反映する場面がなく、行政のごみ処理担当者とくりりんセンターの職員だけの議論で進められてきた。しかも検討委員会のメンバーは、ほとんどが短期間であり、建設計画について多くを語れないのが実情である。新年度から始まる検討会議や有識者会議に住民代表を参加させてほしい。無理であればいずれも傍聴させて
ほしい旨を提言すること。
2. 地球温暖化が進み気候変動が大きな課題となっている今、現在の建設予定地は十勝川と然別川の合流地点から1キロしか離れておらず、ハザードマップによると5メートル以上の冠水地域になっています。台風、洪水に対し現施設よりもさらに条件の悪い所に建てる理由は何でしょうか。施設を高い壁で防護するそうですが道路など冠水が防げず、事実上孤立した施設となるのです。その理由を有識者会議の諸先生方にも説明を求めていますが、全く理解できません。一カ所集中ではなく、十勝地域に分散して配置し危険リスクを避けるのがこれからの課題だと思います。それを考えるのが十勝圏複合事務組合の使命ではないでしょうか。有識者会議の議事
録を見ると現くりりんセンターの建つA、B地点は最初の検討からはずされている。現くりりんセンターの横のパークゴルフ場は、そもそも建て替え用地として考えられていた。ここに建てれば煙突ほかも再利用でき経費は大幅削減できる。なぜこの地点に造ろうとしないのかを正してほしい。
3. この新施設が建つと今後30年以上は使用することになります。目下ストーカー方式の焼却炉を考えているようですが、アメリカでは168炉、フランス100炉という焼却炉数なのに対して、日本は1400炉という焼却炉大国です。環境問題が叫ばれるなか、燃やし続けるのはもう時代遅れです。燃やすのではなく、資源として活用していくのが持続可能社会の考え方です。十勝19市町村で作る十勝バイオマス産業都市構想では、「十勝の農・食・エネルギー自給社会の形成を目指して」を掲げています。農業残渣、家畜排泄物、生ごみなどをバイオマスの原料として活用し、消化液、発電、熱量利用、水素ガスを作り出し、産業都市構造の推進による新規雇用2200人、生産誘発額183億GDP押上92億円の効果も生み出せると書かれています。なぜこんな素晴らしい計画があるのに時代に逆行するような計画を立てるのか。排出量の5割近くを占める生ごみ処理だが、十勝ではすでにバイオマスプラントが30基は作られ、これからまだまだ増えていく中でバイオマスプラントでの生ごみ処理を考えるべきと思う。いずれにしても燃やすという概念は時代遅れである。
4. 中間処理施設整備計画は、市民の声もあって1年間再検討の期間としてあてられたが、この1年間を通じて以上のような観点から調査が進むことを切に求める。
以上陳情します。

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プラリサイクルの誤り

ミッコ・ポーニオ(MikkoPaunio)による提言・解説は共感を呼ぶ。論理的視点は科学技術に裏打ちされた地球温暖化と海洋プラスチックによる汚染に対する一つの視点を解説したものである。
CO2温暖化説に関する、あまりにも科学者の意見を尊重しないフエイク情報が溢れ、NHKが頻繁にCO2元凶説のフエイク情報を垂れ流す。科学技術知識があれば、これらが嘘で固められたフエイクニュースでも、みんなが賛成するからという理由だけで推し進められるIPCCの危うさに懐疑的視点で評価する必要がある。「不都合な真実」を著作したマーク・モラノなどは勇気ある疑問であり、これこそ真実なのではないか。
皆の常識が必ずしも正しくはない。それは人類が歴史が物語っている。ガリレオが地動説を唱え、天動説に対抗した問題に行き着く。誤った方向は人類を滅亡させるから、科学者は事実だけををもとに判断する。単なる統計上の結論にはおおきな誤りがあることを知らなければならない。そのためにまず、この著書の一部を紹介する。真に科学的批判に耐えられる著作かどうか、評価するのは読者の科学知識と論理の正しさである。
数回に分けて、この著書のエキスを掲載したいと思うので、興味ある訪問者は学習してほしい。

ミッコ・ポーニオ(MikkoPaunio)MD,MHSは1961年フィンランドのト
ウルク生まれ。ヘルシンキ大学を卒業し、同大学で1990年に博士号を取得。1991年にブリュッセル自由大学でボスドク研究を行い、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームパーグ公衆衛生学校を1993年に卒業(保健科学修士)。公衆衛生の認証専門家(ヘルシンキ大学、1999)であり、ヘルシンキ大学で一般疫学の非常勤教授を務める。
学者一家の出身であり、社会民主党員の三代目。1977年にフィンランド社会民主党に入党。これまで以下の機関に勤務:フィンランド保健厚生研究所、ヘルシンキ大学、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームハーグ公衆衛生学校、欧州委員会、世界銀行、フィンランド社会問題保健省。アメリカ科学保健評議会の科学政策諮問委員会委員。全米保健研究所アメリカ医学図書館に、刊行物40点が所蔵されている。
過去20年間にわたり、健康保護の観点からEUおよび世界の廃棄物政策問題に関する議論に注目し、活発に参加してきた。

◎Copyright 2018 The Global Warming Policy Foundation
翻訳:山形浩生

海を救え:プラスチックのリサイクルは誤り

概要

海洋プラスチックゴミ危機が宣言され、世界中のマスメディアがこぞって一面でこれを報道してきた。欧州連合(EU)など各種アクターは、海洋ゴミに宣戦布告した。年間で1,000億トンものプラスチックゴミが海洋に捨てられ、野生生命に被害を与えている。国際廃棄物協会(ISWA)-この分野で最も能力の高い専門家組織-は海洋ゴミ危機の起源を次のようにまとめている。低所得経済から中高所得経済における陸地起源の海洋ゴミの75%は、塵芥と未収集廃棄物に由来しており、陸地起源の海洋ゴミの残り25%は廃棄物管理システム内から漏出するプラスチックである。言い換えると、ISWA報告によれば漏出の25%はエコイデオローグたちの好きなゴミ対応方式から生じている。これに対し、自治体ゴミ(MSW)と下水汚泥を一緒に焼却すれば、あらゆる漏出が防げる。それなのに、エコイデオローグたちは強硬に焼却に反対するし、EUもまたサーキュラー・エコノミー(循環型経済)という幻想を信じこんで、焼却を嫌う。
 海洋ゴミ問題の大半は、沿岸部や川沿いの町や都市部でのゴミ収集不備によるものだ。これはアジア地域で顕著であり、少し劣るがアフリカでも見られる。この間題は、中国で特に激しい。都市衛生政策は、もともと開発アジェンダの根幹だったが、「サステイナビリティ!持続可能性の母」と呼ばれるノルウェー首相グロ・ハーレム・ブルントラントが、それを一存で世界評議会の作業計画から外させ、1987年報告書にも含めなかったため、無視されるようになった。この報告書は、国連総会での「持続可能な開発」目標の採用につながったことで有名だ。
 本報告は、EUの誤謬だらけの廃棄物政策が持つ、愚かしさ、非効率性、二重や時に三重もの廃棄物管理構造、そしでそこから生じるひどい結果(たとえば2008年ナポリの壮絶なゴミ危機)、そうした廃棄物政策がパリ協定の実施に役立つという事実無根の主張、さらに中国への年300万トンものプラスチック投棄と、それがもたらす海洋環境と健康へのひどい影響を述べる。EUはいまや-サーキュラー・エコノミーの名の下に-EU加盟7カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダ、スウェーデン)で実施されている、非常に成功した焼却方針を冷遇しようとしている。こうした国々はどれも、大規模な焼却能力を持ち、いまや自治体廃棄物の3%を埋め立てるだけですんでいるのだ。

1 はじめに

2015 年に『サイエンス』誌に発表された Jambeck et al. 論⽂は、世界コミュニティに警 鐘を鳴らすものだった。これは何らかの形で海洋に流れ込んでいるプラスチックを定量化するものだった。その量はざっと年に 800 万トンにのぼる。ずいぶん⼤きな数だが、⽐較 対象が必要だろう。これはざっと、フィンランド̶̶⼈⼝ 550万⼈̶̶が毎年輸⼊する原油 の量に相当する。だから⼤きくても、圧倒的なほどではない。だが環境投棄の観点からする と、Jambeck et al. 論⽂によればこれは「混合プラスチック 5 ガロン⼊り袋を 5 つずつ、 世界中の海岸線⼀フィートごとに置けるだけの量」となる。続くLebreton et al. 論⽂は、特 にアジアの⼀部の河川やその流域が、海洋汚染を極度に悪化させていることを⽰した。プラ スチックゴミが 200 万トンもあるのだ。 プラスチックは世界経済で不可⽋な存在であり続ける。プラスチックは主に包装に使われ (約35%)、プラスチック包装はヨーロッパの⾃治体ゴミで廃棄プラスチックの 60% 近くを 占める。だがプラスチック⾷品包装は、⾷品衛⽣にとって重要で不可⽋な⼀部であり、⼤き な健康・環境⾯の便益を持つ。特に、主に⾷品廃棄物の量を減らすことで、⾃治体ゴミ (MSW) の蓄積を抑えて防⽌するための有効な⽅法であることが⽰されている4。 プラスチックは主に天然ガスや、⽯油精製の副産物で作られる。バージンプラスチック⽣ 産量は現在、世界で年 3.5 億トンなので、海洋ゴミとなる年 1,000 万トンは、総⽣産量の 3%ほどだ5。リサイクルプラスチックの⽣産量は、バージン⽣産量の 2%ほどだ6。世界 GDP と⼈⼝の増⼤に伴い、プラスチックの⽣産量は急増している。2015 年現在、累積で およそ 63 億トンのプラスチックごみが出ている。うち「リサイクル」分は 9%にとどま る。12%は焼却され、79%は埋め⽴て地や⾃然環境に蓄積されている。現在の⽣産と廃棄物 管理トレンドが続くなら、2050 年にはざっと 120 億トンのプラスチックゴミが埋め⽴て 地や⾃然環境に積み上がる7。2016 年の世界⽯油消費量は 44 億トンだ8。 いま「リサイクル」をカッコに⼊れたのは、この分野の統計がどれも悪名⾼いほど⽔増し で誇張されているからだ。特にこれはプラスチックのリサイクルで顕著だ。ここでの数字は 単に、プラスチックゴミとして集められたり、混合ゴミから分別回収されたりした量でしか ない。つまりプラスチックは公式には、収集されるだけで「リサイクル」されたことになり、 それがその後どうなろうとお構いなしなのだ。現実には、プラスチックはほとんどリサイク ル不能だ。リサイクルには均質な廃棄物の流れが必要だからだ。そんなものは実現困難だ9。 リサイクル PET または RPET (ペットボトル) などのポリエチレンは、ある程度はリサイ クルできる。だが⾷品産業は、当然ながらリサイクルプラスチックを使いたがらないし、安 い炭化⽔素は豊富だから、リサイクルプラスチックは当分の間は競争⼒がない。シェール⾰ 命に伴う安い天然ガスの⽣産で、バージンプラスチック価格はさらに下がっている11, 12。 この論説では、1980 年代のイデオロギー主導環境活動家たちと、彼らのリサイクルや「サーキュラー・エコノミー (循環型経済)」の夢想こそが海洋ゴミ問題の究極の原因なのだ と論じる。なぜなら、彼らはアジアやアフリカでの⾃治体廃棄物処理の発展を邪魔したし、 また先進国による廃棄物対処を困難または⾼価にするような管理スキームを後押ししたから だ。そうしたスキームは環境への「漏洩」が起こりやすく、ときにはそれが⼤惨事をもたら す。 現在の「持続可能」政策を批判的に⾒直さなければこの状況は悪化すること、そして状況 がさらに悪化しそうな状態であることを説明しよう。さらには、海洋プラスチックゴミ問題 に終⽌符を打つための⽅策も述べよう。

2 ゴミと対処する三つの方法

⾃治体ゴミは必ず出るし、ヨーロッパでは毎年 2.58 億トンが⽣み出される。廃棄物処 理の主⽬的は、いまでも理屈の上では健康保護だが、現実にはいまや、これは⼆次的な課題 となり、温暖化対策が主要な配慮事項となりつつある。これは以下で詳述する。 EU の廃棄物処理政策は、三層構造の戦略となっている。
優先される順に挙げると:

  • 1. 廃棄防⽌
  • 2. 再利⽤、リサイクル、エネルギー回収
  • 3. ゴミ処分
    EUの廃棄物枠組み指令は、各国が全国的な⾃治体ゴミ処理システムを構築するよう定め ている。そのやり⽅は、世界的なゴミ輸出から、エコイデオローグのお好きな収集リサイク ルの様々な⽅策まで様々だ。でもそのほとんどすべてが、古紙リサイクルも含め、プラスチ ックゴミやマイクロプラスチックを地表や川や、最終的には海に漏洩させる。以下でそうし た対処⽅法の三つを挙げよう。

埋め立て

⾃治体ゴミの伝統的な廃棄⽅法は、衛⽣的な埋め⽴て地だ。衛⽣的な埋め⽴て地を計画、 建設、運⽤、検査するには⼤量の専⾨家が必要だ。廃棄物エンジニアから地質学者まで、その埋め⽴て地が⾃治体ゴミ廃棄に安全かどうか確かめねばならないのだ。EU は埋め⽴て地 指令を通じ、プラスチックを含む⾃治体ゴミの安全な処分を規制している。 環境保護主義者たちは、ゴミの分解に伴うメタン排出̶̶メタンは温室ガスだ̶̶の懸念 から埋め⽴てに強く反対している。実はメタンの⼤半は回収して燃料利⽤できるのだが。 また指令は埋め⽴て地からの汚染物質漏出を防ぐ厳しいルールを課し、埋め⽴て前に⾃治体 ゴミの事前処理を要求している。おかげでヨーロッパでは埋め⽴て処分⽤地が激減し、それ に伴い不法投棄も増⼤している。

リサイクル

環境保護主義者たちはリサイクルのほうがずっとお気に⼊りだ。だがリサイクルの好評ぶ りはほとんどが評判倒れだ。プレコンシューマプラスチックと、ポストコンシューマプラス チックとの運命とは実に⼤きな対照ぶりを⾒せている。ほとんどのプレコンシューマ廃棄物 は、イギリス国内でリサイクルまたは再利⽤されているが、ポストコンシューマプラスチッ クゴミはほとんど再利⽤されていない。その理由はすぐ説明する。だがエコイデオローグた ちは、⽬につきやすいポストコンシューマゴミにばかりご執⼼で、したがって産業分野でご く普通の事業の⼀環として絶えず実現されている、プラスチック材料のずっと⼤きな流れや 巨⼤な節約は無視している。 なぜ両者がちがうかといえば、プレコンシューマでは単⼀種類のプラスチックゴミを実現 するのが⽐較的簡単だからだ。ポストコンシューマだと、これはずっとむずかしい。ゴミの 選別が必要だし、これを排出源で効率的に⾏うのは不可能だ。理由は様々で、そもそも⼈々 がそんな⼿間をかけたがらない (たとえば時間がない)、あるいは家庭や職場でうまくゴミ の仕分けができないといったものだ。技術問題、場所不⾜、衛⽣上の懸念もまた重要だろ う。だからリサイクルの実現には、ゴミを収集後に仕分けしなければならない。このためには、機械⽣物処理 (MBT) と呼ばれるものが EU では好まれる。だが多くの MBT 施設 ̶特に南東ヨーロッパのもの̶は名実ともにまったくのインチキだ。こうした施設は混合ゴミを受け⼊れることで、⾃治体が各国のリサイクル⽬標を実現できるようにしている。こうして政府は、EU 法規を遵守できる。でも実際には、きちんと仕分けされるどころか、受け⼊れられたゴミはすべて埋め⽴てられているだけだ。それができるのは、多くの南欧諸国 は埋め⽴て地指令を施⾏していないせいだ。 だがまともな MBTすら、やってみると⼭ほどの問題が出てきた。MBT 施設は、⾃治 体ゴミのフローからリサイクル可能なゴミを分離する。まずは⽣ゴミが仕分けされ、これは 嫌気処理か堆肥化される。他のリサイクル可能な物質̶主にプラスチック、紙、⾦属⽸̶ は機械作業、⼿作業、化学処理で仕分けされる。 ゴミを洗って利⽤可能にするには⼤量の⽔が必要なので、排⽔量はすさまじい。さらにこ のプロセスは⼤量の汚い固形ゴミを後に残す。ここにはとても危険できわめて望ましくない ⽣ゴミも混じっている。さらに選別プロセスは完全に機械化できないので、⼈⼿が必要だ。 MBT 施設はしばしば、職場での健康保護が不備であり、こうした施設の世間的なイメージ は、第三世界からヨーロッパにやってきたのに、汚いゴミを扱わされて有毒ガスを吸わされ ているゴミ仕分け⼈というものだ。⼈間がこれだけ介⼊しても、MBT 施設はきわめて⾮効率だ。MBT 施設にやってくるゴミのうち、リサイクル可能な材料に仕分けできるのは三 分の⼀以下だし、そのリサイクル可能というのもあくまで原理的にはというだけの話だ (第 三章を参照)。残りの三分の⼆、つまり MBT から出てくる⼤半のゴミは、有機無機ともに リサイクル不可能だ。もともとその⼤半は、熱を必要とする⼯業プロセスで他の燃料と共に焼却される予定だった。このためこれは⼀般にゴミ固形燃料 (RDF) と呼ばれる。でも実際 には、これは不可能になってしまった。というのも EU の 2000 年廃棄物焼却指令は厳し い排出規制を設けたので、RDF をそんな形で燃やすのは不経済になってしまったからだ。 こうした問題を端的に⽰すのはイタリアのカンパーニュ地⽅におけるゴミ処理の物語だ。ここでは、ゴミ政策に⽅向性について⻑い政治闘争が繰り広げられた。グリーンピースなどのエコユートピア主義者たちは、環境上の問題が⼗分に知られているのに MBT ゴミ処 理を強く⽀持していた。そしてそれに代わる⾼温焼却に対しては、ロッサーノ・エルコリーニという地元教師率いる強引な反対運動が展開された。やがてエコたちが勝ち、1997 年に MBT 処理⽅針が採択された。焼却炉は建設されなかった。すでに⾒た通り、EU 廃棄物焼却指令が導⼊されたとき、混合焼却は不経済になった。でも専⽤焼却炉が建設されなかったので、カンパーニュ地⽅はいまや RDF の処理⼿段をまっ たく持たない。結果として、RDF は投棄された。まずは合法的な埋め⽴て地に、それから ⾮合法の埋め⽴て地に、そして最後には MBT 施設に放置され、置き場所がなくなるまで 積み上がった。とうとうゴミ収集業者は、⾃治体ゴミを家庭や事業所から回収しなくなっ た。すでに RDF であふれかえった MBT 施設がゴミを受け⼊れないからだ。 そして⽕事が起き始めた。⼈々はゴミを⾃分で燃やすようになり、さらに合法・⾮合法を 問わず埋め⽴て地で不審⽕が起きるようになった。結果として、カンパーニュ地⽅の相当部分はダイオキシンで汚染され、当局は汚染された地元乳製品を禁⽌せざるを得なかった。RDF は、スウェーデンなど外国に、天⽂学的な費⽤をかけて輸出しなければならなかった20。 おかげで地域の評判は⻑きにわたりガタ落ちとなり、違法ゴミ処理活動の影もいまだにひきずっている。ありがたいことに、バイオ検査とガン疫学研究により、かなりひどいものになると噂された公衆衛⽣上の影響はほとんどないことがわかっている。 こんな⼤惨事の⽴役者であるエルコリーニは、エコ運動から絶賛を受け、2013 年にはゴ ールドマン賞を受賞して BBC に「英雄」と呼ばれたのだった。

高温焼却

こんな事態は⼗分に避けられた。MBT 施設の問題はあっても、ヨーロッパのゴミ処理の 少なくとも⼀部は成功しているからだ。とはいえ、それはまるで EU のおかげではない。 というのも、環境意識の⾼いオーストリア、ベルギー、フィンランド、ドイツ、オランダ といった国々は、巨⼤な焼却炉ネットワークを築くことでゴミ問題に対処してきたからだ。 焼却は⾃治体ゴミへの対処法として圧倒的に優れたやり⽅だ。分別の必要もないため、その他ほぼすべての処理法につきまとう漏洩問題も起きない。さらに現代的な⾃治体ゴミ焼却 炉は、あらゆるものを燃やせるよう設計されている。河川や海洋のプラスチック公害 (マイ クロプラスチックを含む) の原因となっている、下⽔汚泥さえ燃やせるのだ。結果として、カンパーニュ地⽅はその RDF の⼭̶すでに述べたように、主に紙、プラスチック、 有機物の混合物̶を焼却⽤に輸出することで対処できた。でも焼却の利点があまりに⼤きいので、MBT 施設でのゴミ分別はまったく無駄な⼿順でしかない。たとえば、焼却は元の重量のたった 15-20%を灰として残すだけで、これは専⽤ の埋め⽴て地か、処理をすれば通常の埋め⽴て地にも直接埋められる。その多くは、道路の建材などにリサイクルされる。そして新 EU 規制は 2030 年までに⾃治体ゴミのたった 10%しか埋め⽴てしてはいけないと定めているが、焼却炉アプローチはとても成功してい るので、ヨーロッパの⼀部の国の埋め⽴て量は 3%に満たない。さらに間もなく有価⾦属の ために焼却灰を「採掘」できる⾒通しなので、投棄量はさらに減るはずだ。 焼却施設はきわめて低排出でなければならず、このためエコイデオローグの好きな各種ゴ ミ処理⽅式より健康的で環境に優しい。スウェーデンの焼却炉ネットワーク全体 (2009 年で 32ヶ所) が 2009 年に排出したダイオキシンは 0.5 グラムでしかない。これは 1985 年 の 200 分の 1 だ27。カンパーニュ地⽅⼀帯で⾒られた深い埋め⽴て地⽕災⼀件だけでも、 スウェーデンの焼却炉ネットワークが⼀年かけて⽣み出すダイオキシン量に匹敵する。さらに混合⾃治体ゴミの焼却は、温室ガス排出を気にするなら圧倒的に最⾼のゴミ処理⽅式となる。これは、プラスチック包装や⽣ゴミを含む混合ゴミを直接燃やしたら、⽯炭や天 然ガスを燃やす必要性は減るという単純な事実のせいだ。それなのに、環境保護論者や EUはどちらも、焼却炉は炭素排出を増やすというまちがった主張に基づいて、頑固に焼却に反対する。

3 ゴミ問題を外国に押しつける

前節では、MBT 施設でうまく仕分けされるわずかな割合のプラスチックや、もともと分 別収集されるプラスチックは、原理的にはリサイクル可能だと述べた。だがプラスチックリ サイクルの経済性はマイナスで、処理業者としてはインチキをする強いインセンティブが働 く。材料がリサイクル⽤に MBT 施設に送られると、EU のモニタリングから⾒ればそれ は「リサイクル済み」となるので、後はそれを⼀番お⼿軽に始末するにはどうしようか、と いう話になる。それが実際にリサイクルされるかどうかはわからない。 MBT からのリサイクルプラスチック材料は極東アジアに送られ、それが新しいプラスチ ック製品になるかは不明だ。EU はいままで中国へのプラスチックゴミ輸出者としては最⼤ で、年間 300 万トンも送っている。だがこの取引が重要な環境問題に繋がっていること は、ますますはっきりしてきた。特に、ゴミの流れが海に漏れる⽅法が三つはある。

  • ⼆級品のプラスチックゴミ出荷者は、埋め⽴て地への⼊構料を避けようと、それをあ っさり海に投棄する。
  • 過剰なリサイクル不能プラスチックゴミは、すでに容量ギリギリの⾃治体ゴミ処理能⼒を圧迫し、ゴミは結局陸や川に不法投棄されて、その相当部分が海に流れ込む。
  • 中国の規制を受けない⼩規模リサイクル業者は、しばしばリサイクル不能なプラスチ ックを野焼きしているが、⼀部はそれを不法投棄し、その相当部分が海に流れ込む。

4 海洋プラスチック問題

国際廃棄物協会 (ISWA) は、国際⾃治体ゴミ問題の評価と管理の⾯で最も能⼒の⾼い国 際機関だ。2017 年に同協会は、海洋ゴミの問題に関する「海洋タスクフォース」報告を発 表した。この報告はエコイデオローグや NGO、EU 政治家からのすさまじい圧⼒下で書か れた。だからその本当の意味を読み取るには、⾏間を読む必要がある。たとえば、提案され ている⻑期解決策は理想主義的で、エコイデオロギーに基づいているため、再⽣可能エネル ギー源についてのものと同じ、解決不能な問題を抱えている。

アジアの貢献

⼀⾒しただけではわからないが、報告書の⽂⾔からは、世界海洋汚染問題に主に貢献しているのは、中国といくつか特定のアジア諸国だというのが読み取れる。海洋汚染を抑えるた めの鍵は、アジア (そしてずっと劣るがアフリカ) の⼈⼝密集地に近い特定の川数本の役割 を理解することだ。こうした⽔路はいまや、実質的には単なる下⽔道になっている。ISWA 報告書によれば:

最近の調査の推計では、低所得経済から中⾼所得経済における陸地起源の海洋ゴミの 75%は、塵芥と未収集廃棄物に由来しており、陸地起源の海洋ゴミの残り 25%は廃棄物管 理システム内から漏出するプラスチックである。



つまり漏出の 25%はエコ主義者のお好きなゴミ処理⽅式のせいだ。
残りは都市ゴミ処理 の不備や衛⽣慣⾏からきている。 発展途上国における⾃治体ゴミ処理の不備は、1980年代ブルントラント委員会にまで遡れ る。これは現在の「持続可能な開発」アジェンダの発端でもある。その委員⻑グロ・ハーレ ム・ブルントンラントは、元ノルウェー⾸相で、気候変動や節⽔、省エネといった新しいわ くわくする環境問題に魅了されていた̶̶特に彼⼥の秘書官は、草創期の気候変動に関する 政府間パネルのベルト・ボリンと密接に連携していた。結果として、彼⼥は独断で都市衛 ⽣プログラムが委員会の成果に含まれるのを阻⽌した。 それ以来、環境衛⽣問題と、関連する都市衛⽣プログラムはほぼ完全に無視されてきた 。⾃治体ゴミ関連もここに含まれる。⻄側諸国を19世紀以来、貧困、悲惨、栄養失調か ら脱出させたのが、そうした問題へのこだわりだったということを、彼らは無視しているのだ。この無視は、公衆衛⽣にとってひどい結果をもたらしたし、これから⾒るように、環境への被害もすさまじい。

EUの貢献

「はじめに」で述べたように、Jambek et al. 論⽂で世論とマスメディアは海洋ゴミ問題に 注⽬するようになった。この論⽂は、海洋を最も汚している国の初のランキングを載せた。 明らかな⼀位は中国だ。同論⽂は、問題が最終的には沿岸部の居住者によると強調した。 確かにこの論⽂は、海洋ゴミの主要な源としてしっかり中国を挙げてはいるものの、重要なまちがいを含んでいる。おかげで世界の⼈々は、世界プラスチック「リサイクル」ビジ ネスが、海洋ゴミやマイクロプラスチックの中で果たす役割を⼗分に理解できずにいる。論⽂にはこうある:

我々は、国際的なゴミの輸出⼊は考慮しなかった。これは国ごとの推計値には影響するが、世界総計には影響しない。



論⽂の出発点は、その国のゴミ処理が不備なら、その分だけ海に漏出するプラスチックゴ ミも増える、というものだ。中国のゴミ輸⼊先は、ゴミ処理不備がきわめて低い1%程度のところだ。中国の不備率は 30%近い。 だが Jambeck et al. は、プラスチックゴミの国内発⽣だけを考慮しているので、中国についての海洋ゴミ推計値は⼤幅に過少となっている。要するにこの論⽂は、年間 800万トンの プラスチックゴミ輸⼊ (累積で 1 億トン40) を無視しているのだ。おそらくは、それがリサ イクルされたと想定したのだろう。これは̶もちろん̶事実とはかけ離れている。つま り EU (そしてアメリカ、⽇本、オーストラリア) のリサイクルが海洋ゴミの⼤きな発⽣源 だという事実は、完全に隠されているのだ。 この1億トンの輸⼊プラスチックゴミのうち、環境に漏出して最終的に海に⼊ったものがどのくらいなのか、正確かつ厳密に推計するのは不可能だ。専⾨家の⾒⽴てでは、20%程度というのがありそうだ。この数字はもちろんすさまじい量だ: 簡単に選り分けられるもの̶すぐに分別できたり機械回収で均質なプラスチックゴミの 流れ (通常は PET ボトル) を⽣み出せたりするものは、すでに選り分けられている (それですら 20%はゴミ扱いになる)。したがって残りは低品質のもので、その相当部分はおそらく燃やされたり、川や海に投棄されたりする。リサイクルを偽装した不法投棄が⼤量にあるのはわかっている。富裕国のゴミ保有者は中国の輸送業者にお⾦を払って問題の隠蔽を依頼し、埋め⽴て料⾦を逃れたり危険廃棄物処理の⾼費⽤負担を逃れたりする。その量の⾒極めはむずかしいが、その⼤半は海洋や河川や 陸上に不法投棄されているのは明らかだ。リサイクルゴミの中国への年間輸⼊量だけでも、あまりに多すぎて中国政府がきちんと検査できないほどだ。

5 拡大する危機

アジア 2013 年に中国政府は、いわゆる「緑の柵」を設け、もはやきちんと仕分けされていない ゴミは受け⼊れないと宣⾔した。ある ISWA 報告書は、これで問題が終わるわけではないと予想している:

現在の事業モデル(おもに中国輸出に依存)は⻄欧/北⽅の⾃治体リサイクルシステムの運⽤成功に不可⽋となっている。このシステムの堅牢性や全体としての持続可能性については疑問が述べられている。



この結論が出てきたのは、エコな「リサイクル」詐欺のひどい影響̶環境⾯でも公衆衛 ⽣⾯でも̶がだんだんあらわになってきたからだ。この報告が述べたように:

国際プラスチックスクラップ貿易について述べられた、環境や保健⾯での重要な懸念については、確認や検証ができるほど⼗分な系統的検討が⾏われていない。



残念ながら主流メディアはこうした恐ろしい事態についてダンマリを決め込むことにしたので、⼀般⼈は「地球を救う」と称して何が起きたかまるで知らない。だが中国政府は何も幻想を抱いていない。2017 年 12 ⽉、世界環境⼤⾂会合は、世界的な海洋ゴミ危機を宣 ⾔し、中国の環境⼤⾂は、中国がやがて各種のゴミ輸⼊を⽌めると⽰唆した。この輸⼊禁⽌は 2018 年初めに施⾏され、24 種類のゴミに適⽤される。年間 8,500万トンに相当し、うち 800 万トンがプラスチックゴミだ。富裕国に輸出品を運ぶ中国の貨物船は、かつてはプラスチックその他のゴミを満載して戻ったが、いまや空荷で戻る。

EU

EU は、⾃分のリサイクル戦略が持つ、とんでもない環境⾯や健康⾯の影響について黙殺している。それどころか、問題を解決しようとするより、むしろ「プラスチックへの戦争」を宣⾔してかえって態度を硬化させている。その新しいプラスチック戦略は、EU は海洋ゴミをほとんど出していないと威張っているが、その⼀⽅で過去 20 年に EU で集められたプラスチックゴミの半分近くは中国に送られ、それが壮絶な影響をもたらしていることは認めている。そしてプラスチックのリサイクルがパリ協定の実現を後押しすると̶ 不当に̶主張することで、道徳的に優位に⽴とうとさえしているのだ。
EU が最近採択したプラスチック戦略は、2030 年までにすべてのプラスチック包装をリサイクル可能か再利⽤可能にしようとする。これは⾮現実的だし、⼤きな害を⽣じかねない 妄想だ。エコ運動と、廃棄防⽌やリサイクルをめぐる⼆重のこだわりのせいで、多くの国は MBT 処理施設を増やす道を選んだ。だが将来的には、埋め⽴て地指令のおかげで MBT アプローチの使⽤ははるかにむずかしくなる。⾃治体ゴミのうちリサイクル不能な部分は、 もはや中国には輸出できないし、EU 法はいまや 2030 年には⾃治体ゴミの 10%しか埋め ⽴てできないとほぼ定めていて、実質的に埋め⽴ても不可能にしてしまった。イギリスの ような、焼却能⼒がほとんどない国は、したがって RDF を他のヨーロッパ諸国に輸出することになりそうだ。まさにカンパーニュ地⽅の場合と同じだ。でもこのやり⽅ですら閉ざされかねない兆候がある。
EU 委員会の新プラスチック戦略に よれば:

各国の当局に対し、分別収集を強化し、リサイクル能⼒への投資⽬標を定め、混合ゴミ処理のインフラ能⼒(例:焼却炉) の過剰を避け、⽣産者の拡⼤責任活⽤に関するさらに密接に連携したルールの設定に関する責務をさらに明確にすべきである。



つまり焼却能⼒̶すでに不⾜している̶は減らされ、重点はリサイクルに移る。EU 予算委員⻑エッティンガーが最近になって、プラスチック焼却には罰⾦を導⼊しようと提案したのも、それをさらに裏付けるばかりだ。 こうしたバカげた「リサイクル」は今後、悪化する⼀⽅となる。環境保護要件でまもなく、⽣物処理廃棄物や動物副産物のリサイクルはできなくなる。それなのに EU 廃棄物フ レームワーク指令は、発⽣源でのますます複雑な分別を要求しており、おかげで 2022 年からは収集される⽣ゴミの量は激増する。こうした増える⼀⽅の、きわめて⾼価な (家庭で必要になる無給労働を含めなくてもすでに⾼価だ) 処理済み⽣ゴミの⾏く末として考えられ るのは、RDF と同じく焼却炉しかない。エコ NGO と肩を並べて、ますます複雑化するゴミ処理と無⽤な追加のゴミ処理⼿順の追加を求めるゴミ処理企業は、こうして報われる。その代償を⽀払わされるのは⼀般市⺠だ。 ここから考えて、プラスチックゴミが海に流れ込む可能性はずっと⾼まるし、EU もアメ リカも⽇本も、プラスチックゴミ押しつけ先を必死で探している̶ベトナム、マレーシ ア、インドネシアが⽬下のお気に⼊りだ。2018 年最初の数ヶ⽉に関する統計を⾒ると、ゴミ輸出の⾏き先は激変している̶中国から東アジアの他の国になっている。こうした国々はこれまで、中国に最終的に送られる前段の処理場として、ゴミの分別を⾏ってきた。 だがそこではねられたゴミはやはり処理が必要だし、東南アジアのゴミ処理インフラは中国よりはるかに原始的なので、はねられた「リサイクルゴミ」のうち海に捨てられたり野焼きされたりする割合は不明だ。環境や公衆衛⽣⾯での影響は、改めて⾔うまでもない。だがこうした⼩国が、いまや富裕国に積み上がるゴミの輸出先として中国に完全に取って代われるとは考えにくい。 明らかに、リサイクルにこだわる EU の決断と中国のゴミ輸⼊禁⽌措置をあわせると、状況はこれから悪化する⼀⽅となる。

6 ゴミ問題の解決策

Jambeck et al. 論⽂の登場以来、海洋ゴミ問題への対処法についてはおかしな発想がいろいろ出てきている。当の Jambeck et al. もこんなことを述べている:

歴史的には、埋設や焼却によるゴミ処理は、不活性または⽣分解ゴミなら⼗分だったが、合成プラスチックがゴミのフロー中で急増したためパラダイムシフトが必要である。 ⻑期的な解決策はおそらく廃棄物削減や「下流」ゴミ処理戦略、たとえば回収システム拡⼤や、⽣産者責任拡⼤などを含む(後略)



反焼却と反埋め⽴ての偏りは明らかで、この⽴場を⽀持するために彼らが参照する⼆つの 論⽂でそれがさらに強調されている。⼀つは妙に形⽽上学的な論⽂で、こう終わっている:

⾃然は相互依存に対して、⼰を最⼩化して消し去ろうといった対応は⾒せず、むしろ成⻑し華開くことで対応する。同様に、⽣産的で持続可能な経済を⽣み出すカギは、被害抑 制や最⼩化の戦略を通じてではなく、産業のメタボリズムを育むことにあるのだ。



この形⽽上学的な理由づけが現在のプラスチックに関するゴミ処理パラダイムをなぜ否定することになるのかはよくわからない。⼆つ⽬の参照⽂献は機能不全で⾮効率で⾮衛⽣的な、EU の⽣産者責任⽅式の背後にある論⽂だ。この⽣産者責任⽅式は、他の⽋点すべて̶環境へのゴミ漏洩発⽣がすぐ⽬につく̶に加え、世界の他の地域にいるインターネット取引業者にはまったく影響しないのだ。 ⼀⽅、ISWA 報告書は事例研究を⼆つ挙げている。どちらも、海洋ゴミ問題やリソースの 効率的な利⽤への取り組みにはまるで役に⽴たないものだ。 最初の事例はヨーロッパのプラスチックリサイクルの最先端であるオランダで、同国は EU 最⾼のプラスチックリサイクル率 (67%) を達成したとされる。だが CPB オランダ経済分析局の最近の論⽂はオランダのリサイクルプロセスの影響を検討し、それが使途の限られた低品質なプラスチックを⽣み出しているだけで、炭素排出相当量で、同国として0.15%を節約できているだけだと結論している。もっとひどいこととして、いまや中国が輸⼊禁⽌を発表したので、リサイクル施設は溜まる⼀⽅のプラスチックをどうしたものか困っている。中国の輸⼊禁⽌直後から、オランダの焼却能⼒は限界に達しているのだ。 ISWA 報告書はまた、イギリスのブリストルにある新しい精製所をほめそやす。これはプ ラスチックからディーゼル燃料を作るもので、まちがいなくイギリス政府からたっぷり財政⽀援を受けているはずだ。実は、熱や電⼒は⾃治体ゴミ焼却炉のほうがずっと効率的に⽣成できるし、カーボンフットプリントもはるかに⼩さくてすむのだ。 アジアの海洋における海洋プラスチックゴミは、ほとんどがアジア⾃体での⽣産からくる ものであり、これは少なくとも部分的には、エコ活動家が開発アジェンダを、⾃治体ゴミ処理といった退屈な問題から、気候変動などの華々しい課題へと歪めたために発⽣した問題だ。だがヨーロッパの海洋ゴミ問題への貢献の背後にも、エコ運動が存在している。サーキ ュラー・エコノミー (循環型経済) という幻影のおかげで、各種の⾼価で複雑なできの悪い ゴミ収集⽅式が⽣み出され、ゴミ処理についても機能不全で環境に害の⼤きいアプローチが しばしばできあがった。そのすべてが、環境へのプラスチック流出をもたらす。考えなしの環境保護運動が引き起こした問題への解決策は、当然ながらさらなる考えなしの環境保護主義ではない。サーキュラー・エコノミーなどというあり得ない妄想を追及して、環境被害の危険を引き起こす必要などないはずだ。上の分析は、持続可能な唯⼀の道は ̶先進国でも発展途上国でも̶ゴミを収集して、きちんと管理された埋め⽴て地 (できれば川から遠いところ) に捨てるか、焼却することだと⽰している。 オーストリア、デンマーク、スウェーデンはしっかりした⾃治体ゴミ政策実施の最先端に いる、環境保護の先駆者だ。だがその⾃治体ゴミ処理 (⽇本の場合には下⽔も) の⾒事な進歩は、いまや EU の新しい反焼却姿勢に妨害を受けている。この姿勢はばかげているし、家庭や事業所がますます複雑な分別⽅式に参加するという、未来のユートピア信仰を前提にしているのだ。また部分的には、エコ NGO とゴミ処理企業との汚い野合にも後押し された動きでもある。この両者とも、混合ゴミの袋 (衛⽣的に封印されすぐに燃焼できるもの) を回収に⼀台だけトラックがくるよりも、三台のゴミ回収⾞がくるほうが好都合なのだ。もちろん⽪⾁なことに、少なくとも EU では、「リサイクル」されるはずだった複数のゴミの流れは、おそらくどのみち同じところにやってくる̶焼却炉だ。