「ワクチン1日100万回」?

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菅首相がシャカリキ

「ワクチン1日100万回」計画の荒唐無稽

公開日:2021/05/10 14:15 更新日:2021/05/10 14:42
7日の会見で菅首相が突然、新型コロナウイルスのワクチン接種「1日100万回」構想をブチ上げた。「1日100万回の接種を目標とし、7月末を念頭に、希望する全ての高齢者に2回の接種を終わらせる」というのだ。3月上旬に医療従事者への接種が始まってから2カ月あまり。国内の接種実績はまだ420万回程度だ。4月12日から接種が始まった高齢者に限れば、1回目の接種を終えたのは約24万人。対象となる高齢者3600万人の0.7%に過ぎない。
「100万回」の根拠を問われた菅首相は「インフルエンザの接種は1日60万回くらいやっていて、今回ははるかに広い体制を取っているから可能だ」と答えるだけで、具体策は語らなかった。「インフルエンザは全国のクリニックで接種しているから1日60万回が可能ですが、ファイザー製ワクチンは超低温輸送や保管上の問題があり、すぐに開業医に行き渡るとは思えない。ワクチン管理と接種予約のシステムが別々なことも混乱の要因になりそうです」(医学博士の米山公啓氏)
7月末までに高齢者への2回接種を終えるには、計7200万回の接種が必要だ。逆算すると1日100万回という数字になるだけで、机上の空論なのである。

■大規模接種センター開設も計画倒れの可能性

24日には東京で1日1万人、大阪で5000人の大規模接種センター開設も予定されているが、これも計画倒れの可能性が高いという。「2月に実施した高齢者接種の模擬訓練では、1人あたりの接種に約12分かかった。頑張って10分で済ませたとしても、1時間に6人しか打てません。東京で1日1万回ということは、防衛省の医官・看護官70人が24時間ぶっ通しで接種し続けなければならない。それに、1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)だけでも900万人の高齢者がいて、毎日1万人も大手町の接種会場に集まってきたらクラスターが発生しかねません。仮に計画通りいっても1カ月で30万回ですから、総理の1日100万回構想には焼け石に水なのです」(厚労省関係者) 
菅首相は「私自身が先頭に立ってワクチン接種の加速化を実行に移す」と言うが、首相自ら注射器を手にワクチンを打ち回るのか。「1日100万回」は無理筋な精神論でしかなく、前首相から引き継いだ「口から出まかせ」に終わりそうだ。