核兵器禁止条約2021年1月に発効へ

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中村敦夫 末世を生きる辻説法

日本はアジア初のカモ

廃物利用の原発を万歳購入した人

公開日:2021/01/29 06:00 更新日:2021/01/29 06:00
いくら「反戦」を唱えても、なかなか戦争はなくなりそうもない。なぜなら、戦争は夫婦喧嘩と違い、経済行為だからである。究極の経済政策とは、「強盗」のことだ。他者の所有物を奪うのは、暴力が一番手っ取り早い。そして、暴力の決め手は大量破壊兵器である。人類は76年前に核兵器を発明し、広島、長崎の悲劇を実現した。その後は、他国にも核が渡ってしまったため、現実的に使用は不可能となった。いやいや、必ずしもそうとは言えないか? 大統領退陣式でトランプがやけになり、イランに向けた核攻撃のボタンを押すことだってあり得た。無論、その時点で、人類史は終わっていただろうが。
さて、人間というのは一見賢そうに見えて、相当バカっぽい動物だ。原爆開発に大金をつぎ込んだ揚げ句、やたらに使用できないと知った米政府、軍部、投資家たちは原爆製造技術を利用し、元金を取り返そうとジタバタした。原子力潜水艦での応用には成功したが、何隻も需要がある代物ではない。苦しまぎれにたどり着いたのが、「原発」だった。原発が生み出すプルトニウムは、核兵器に転用しやすいのを知りながら、世界に向け大々的に売り出した。そのキャッチコピーが「原子力の平和利用」だった。アジアで最初のカモになったのは日本だ。1953年、米国の諜報機関は、当時改進党の若手代議士だった中曽根康弘をハーバード大学に呼び寄せ、3カ月間の原発教育を浴びせた。どう考えても異常な出来事だ。翌年には早くも、日本初の原発関係予算が、国会通過。
中曽根と並んで、日本の原発振興に身を投じた大物がもうひとりいる。読売新聞の創始者であり、後にNTVをつくった正力松太郎。公安警察出身、普通選挙運動弾圧、大政翼賛会幹部。戦後はA級戦犯として投獄されていたが、釈放後は政界に入る。水爆実験反対の国民運動が広がるのを危惧し、米諜報機関と組んで、原発の安全神話デッチ上げに没頭した。正力、中曽根は2人とも、科学技術庁長官、原子力委員会委員長の役職に就き、この狭い地震列島に危険な原発を造りまくった。
アメリカ政府にとっては、2人ともウハウハのオ友達だ。原爆を落として20万人も殺したはずの相手国が、今度は廃物利用の原発を、万歳しながら買ってくれたのである。

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原子力の平和利用を逆手にとって、ありもしない地球温暖化原因をCO2だと主張し、原発はCO2を見かけ上出さないからと一般国民を騙し続け、英国サッチャーが原発を推進したことから、安全神話を日本社会に蔓延させた。その張本人は逝去して内閣・自民党合同葬までも行った。政治家が評価されるのは彼らの死後の社会がより良い社会になったかどうかであり、近代日本の国の方向は、科学技術を無視した経済学者や資本家の思うつぼになってしまった。原発安全神話とカーボンフリーは、現在のIPCCにまで利用され続けている。ガースーが打ち出した経済政策に2050年までのカーボンニュートラルや2030年までのガソリンエンジン車のEV化など原発の二の舞どころか、日本社会を成り立たせてきた工業立国をもはや放棄する愚策である。ガソリンエンジンの市場からの撤退は、新たな問題を引き起こす。その第一は寒冷地でのバッテリーは寿命が短いこと。バッテリーの廃棄物処理は多額のコストと有害物質の発生が危惧される。何よりも石油が賄ってきたエネルギーをすべて電気に変換するには現状の再生可能エネルギーでは全く間に合わないこと。日本の屋台骨を背負ってきた自動車産業を支える部品製造業はほとんどのこらず、雇用も完全に失われる。
現在あまり問題とならない、北海道の大規模酪農もいずれその飼育頭数に制限が加えられ、肉食禁止となることも考えられる。すべてIPCCのいう家畜は温暖化原因物質(げっぷや排出物のメタンガス)を排出するからである。まして、北海道ではIPCCがいうような温暖化は全く感じない。何の変化もないといってよい。むしろ北海道は温暖化することで作物が良く育つ。森林もよく成長する。そんな科学的理論も無視する政治家に任せてはいけない。工業技術者ならカーボンフリーがいかに生物学・物理学に反する行為か科学者は皆わかっている。
トヨタ社長がEV化は自動車のビジネスモデルを崩壊させるとまでコメントした。産業界はカーボンフリー政策や、EV化がいかにバカげた愚策どころか工業立国を放棄する分水嶺にあることを政治家に思い知らせることだ。