「コロナに打ち勝つ」はつじつまが合わない

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中村敦夫 末世を生きる辻説法

東京五輪開催で「コロナに打ち勝つ」はつじつまが合わない

公開日:2020/11/27 06:00 更新日:2020/11/27 06:00
呆れたとか、驚いたとかいうレベルを超え、今や恐怖さえ感じる。選挙の敗北を認めぬトランプは、最重要課題であるコロナ対策を放置し、死者の数を増やし続けている。それどころか、この時期に側近を集め、イランとの戦争の可能性を議論しているという。
その国のリーダーが理性と知性に欠け、精神が錯乱状態に陥ると、国家機能は麻痺する。つじつまの合わぬ言動がまかり通り、人々は反論も抵抗もできなくなる。人種差別は、つじつまの合わぬ愚の骨頂だ。
トランプは多分、イスラム教徒や黒人は存在すべきではないと考えているに違いない。ユダヤ人ホロコーストを目指したヒトラーも同類だし、「神の国」を名乗り、他国を侵略した大日本帝国の軍事政権も同じだ。この3者に共通しているのは、いずれも主張に根拠がなく、「つじつまが合わない」という点である。
今、日本が直面している「つじつま」は、東京五輪の強行だ。五輪はどこでやろうと結構だが、そもそも東京でやらねばならぬ理由はまったくなかった。あるとすれば、安倍前首相の虚栄心とごまかしだけ。原発事故の後始末が遅々として進まず、成長戦略もことごとく失敗。国際的な経済力も上位から墜落という時代が続いた。ここらで、目くらましの派手な花火を一発ぶち上げる必要があった。とはいえ、これは税金の無駄遣いによる巨大イベント型公共事業だ。五輪でいい目を見るのは、このイベントにたかる一部のオトモダチ企業だけである。大衆には切符を売りつけ、バカ騒ぎをさせておけばよいと考えた。
東京開催の権利獲得が問題だが、決定権はIOCにあった。この委員会には、絶えず黒い噂がつきまとう。安倍前首相もブエノスアイレスの総会に足を運び、「原発の汚染水は安全」と大嘘をついた。招致ロビーに大金をばらまき、噂通り「トーキョー」に決定。直後、IOC委員の買収容疑が発覚し、日本の五輪委員会会長が辞任。国内でも、利権をめぐりダーティーな不祥事が続いた。コロナ患者は増える一方だが、菅は安倍の後を継ぎ、断固強行だ。何のため? 無観客の競技をだれが喜ぶのか? 選手は隔離し、観光も交流もさせない。「健康増進」と「国際友好」が目的なのに、まるでつじつまが合わない。「コロナに打ち勝つ」だと!

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朝日digital>記事
新型コロナの感染状況の推移について「神のみぞ知る」と言った発言の真意は何か――。西村康稔経済再生相が発言を引用したとした政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、27日の衆院厚生労働委員会で説明した。
今後の感染者数は「神のみぞ知る…」 西村担当相が発言
尾身氏は、感染者数や検査での陽性率などを挙げ、「我々は感染状況を評価するために色々な指標、多角的な方法を使って、いま何が起きているかを知りたいが、100%知ることはデータにも限りがある。そのことを私は比喩的に『神のみぞ知る』と言っている」と説明。「実際は『神のみぞ知る』だが、そこになるべく近づくように色んなデータを総合的に、毎日のように分析することが大事という文脈で申し上げた」と述べた。
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コロナ対策の旗振り役が尾身会長の発言をちゃっかり運用して、コロナ対策の分科会の専門家が予測はむつかしいと漏らしたことを、自らの責任逃れのようにコメントするような大臣が、旗振りをしている限り対策が後手後手になっていくことを国民はよく知っている。こんな国会議員がなんと多いことか。国会は通常国会が6月に閉じてから、安倍の病気引退プロジェクトを演出しコロナ対策から目を背けた。第2波は真夏だったが、秋に入って一気に感染爆発が起きた。この間1波、2波の経験や知見を生かして秋に備えることをやってこなかった。むしろGOTOトラベルなど国民の移動を推進するかのような政策を行った。そのためもはや完全にコロナ禍を脱却するタイミングを失った。
こんな折に延期された来年のオリパラについて何らの議論もしていないのが国会・JOC・東京都である。それこそ各界の有識者を集めて議論すべき時だ。中止決定が遅れれば遅れるほどその経済的損失は膨らむ。また、最も危惧されるのが教育現場である。再三休講措置が取られると身を入れた学習や部活は困難である。早々に決定することが何より国民の不安を払しょくすることになる。
IOCは非政府組織 (NGO)の非営利団体 (NPO)であり、その運営資金は、主に放映権料販売とスポンサーシップ収入による。一般の団体であるから彼らは放映権料やスポンサーに責任を持つだけである。
日本が腫れ物に触るような対応はすべきでない。そもそもオリンピックがアマチュアの国際大会であったものがいつまにか、プロスポーツ選手の自己アピールの場と化しており、各種スポーツ団体はほぼ毎年のように世界大会が行われている。あえて多くの競技を一か所でやる必要があるのか疑問である。本来のオリンピック精神に基づくアマチュアスポーツ大会へ回帰することが必要である。