こざかしい菅首相

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中村敦夫 末世を生きる辻説法

学術会議問題改ざんが加われば即退場

公開日:2020/10/16 06:00 更新日:2020/10/16 06:00
菅首相は「日本学術会議」問題で、早々に馬脚をあらわした。内閣総理大臣に就任したのだから、まず国会を開き、堂々と自分の政治理念を披露し、国民に挨拶をするのが礼儀ではないのか。
仕事師のふりをして、携帯の価格下げ、ハンコの廃止、不妊医療の問題など、受けそうなテーマだけ拾い上げ、支持率アップを画策するのもこざかしい。コロナ、五輪、原発事故処理など、重大テーマは素通りか?
一方で、政界、官界、報道界、学界などを、味方か敵かの線引きをし、人事権を乱用して独裁体制づくりに余念がない。公の場を嫌い、こそこそと裏工作に熱中するさまは、とても天下人の器には見えない。草むらの深みを用心深く進み、敵の動向を探るケチな蝮を連想させる。他者の意見を無視するという傲慢さは、安倍から学んだようだ。他人の意見から何も学ばない政治家は、決して大物にはなれない。
このタイプの典型的な政治手法は、「詭弁・改ざん・論点はずし」の三拍子である。
これまで、法的にも慣習的にも、「日本学術会議」の会員は、会議の推薦者を首相が形式的に任命してきた。しかし、今年は史上初めて、そのうちの6人の学者を、首相の意思で排除した。
その理由の説明を求められ、首相は「総合的、俯瞰的判断」と答えた。これは詭弁であるばかりか、嘘である。安倍・菅政権は、反知性主義の集団であり、学問とは縁遠い。ノーベル賞受賞者を含む日本のトップレベルの学者集団を、成り上がりの首相一匹が、「総合的、俯瞰的」に判断などできるわけはない。
さすがにこの説明は、世間では通用しなかった。内閣としては、ドサクサに紛れてこの任命拒否を通すつもりだった。だが、意外な世論の反発が起き、大慌てである。彼らは、国民が学問の自由に対し、これほどのリスペクトを抱いているとは考えていなかった。「Go To イート」でクーポン券をばらまけば、おとなしくしているだろうと見くびっていたのだ。慌てた内閣筋は、「これは行政改革の一部分だ」と弁解を始めた。見え見えの論点ずらしだ。論点は「なぜこの6人か説明しろ」だ。答えは明確だ。この6人は過去に、憲法改正のための戦争法案に反対したからである。菅は、なぜ素直にそう言えないのだ。この件に改ざんが加われば、即退場だろう。

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著者:室井佑月作家
1970年、青森県生まれ。銀座ホステス、モデル、レースクイーンなどを経て97年に作家デビュー。TBS系「ひるおび!」木曜レギュラーほか各局の情報番組に出演中。著書に「ママの神様」(講談社)、「ラブ ファイアー」(集英社文庫)など。

室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」

学術会議を巡る政府の態度は野蛮 犠牲者が出てしまいそう

公開日:2020/10/16 06:00 更新日:2020/10/16 06:00
「(前略)国家が全てを支配すると科学は滅びます。ヒトラーのナチス政権下でユダヤ人学者は有無を言わさず排斥されました。あのアインシュタインもその1人。日本学術会議を巡る政府の態度、少しは総合的俯瞰的にそして謙虚に歴史を学ばれてはいかがでしょうか。」(金平茂紀・ジャーナリスト)これは10月10日の報道特集での金平さんの言葉。
日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅首相が任命しなかった問題について、率直にいうと野蛮だと思う。それが普通の感覚だよね。だけど、せっかく金平さんがここまでわかりやすくいっているのに、わからない人がいる。もとからわかりたくないんだろう。この国の学者の研究が中国に利用されているとか、国から不当に学者個人にお金が出てるとか、任命されなかった学者とはまったく関係ないデマを流してまでも、必死で政権擁護する。ほんとに野蛮な人たちだなぁ。
10月5日、菅首相は記者会見ではなく「グループ・インタビュー」というたった3社が代表して質問をする場を設け、このことについて、
「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断をした」と語った。
記者たちはなぜこんな答えで許したのだ? ずっとこの国は学問に政治介入はしないということでやってきた(国際的にもそれが普通)、なのにその方針をあたしたちに説明もなく政府は変えた。それの説明がこれって、よく載せたな。オフ懇いったり、グループインタビューなどという民主主義国家ではあり得ないやり方を許しているから、結果がこれかい?
でもって菅首相は、9日、任命されなかった6人を含む105人のリストは「見ていない」といいだした。「先月28日にリストを見たときはすでに99人になっていた」と。つまり、自分じゃない第三者がそうしたとした。ああ、また赤木さんにつづく犠牲者が出てしまいそう。