安倍首相「言論テレビ」で明らかな大ウソ

「言論テレビ」でついたもう一つの嘘

日刊ゲンダイDIGITAL 
公開日:2020/05/20 06:00 更新日:2020/05/20 06:00
政府・与党が今国会での成立を断念した検察庁法改正案。安倍首相は、自民党の二階幹事長と首相官邸で会談し、「国民の理解なしには進められない」との認識で一致したという。だが、安倍政権はこれまでも、「特定秘密保護法」(2013年)や「安全保障関連法案」(15年)、「TPP承認案、関連法案」(16年)、「テロ等準備罪(共謀罪)」(17年)など、国民の反対を押し切って数々の悪法を強行採決させてきただけに、今回の成立断念は極めて異例だ。政府・与党はなぜ、検察庁法改正案については強行採決しなかったのか。理由として、ささやかれているのは、安倍首相の「大ウソ」だったという。
検察庁担当記者がこう言う。
「安倍首相は15日の『言論テレビ 安倍首相に「検察官定年延長問題」を聞く』に出演。ジャーナリストの櫻井よしこさんから、『いまの検事総長の稲田(伸夫)さんがお辞めにならないから、黒川さんの定年延長ということをお願いしたということが推測されるんですが、法務省の官房長が官邸に持ってきて頼んだということも、これは本当ですか?』と問われると、『検察庁の人事については、検察のトップも含めた総意でですね、こういう人事で行くということを持ってこられて、それはそのままだいたい我々は承認をしているということなんですね』などと答えていたのですが、この大ウソには検察幹部も呆れ果てていたと聞きましたね」
では、どの部分の発言が「ウソ」だったというのか。
「ネットなどでは安倍首相が黒川東京高検検事長と『二人きりで会ったことはない』と言ったのがウソと書かれていますが、問題はそこではありません。まず、実務として、法務省官房長が検事総長をすっ飛ばして『この人事で』なんて勝手に官邸に持っていくわけがありません。しかも、今の稲田検事総長は名古屋高検検事長の林さんをずっと次期検事総長に推していた人ですからね。それに、もともと林さんは法務省事務次官、東京高検検事長に就く予定だったのに、官邸に二度も阻まれているわけで、安倍首相の発言にあった『検察の総意で持ってきた人事をそのまま承認している』なんてウソ八百なわけですよ。そんな明らかなウソを総理大臣が平気の平左で言っていたわけで、検察幹部は『これじゃあ、この人は今後、検察組織をどこまで引っ掻き回すか分からないな』と驚いたそうです」(前出の担当記者)
要するに、「法務省がすべて悪い。俺は関係ない」と言わんばかりだったわけで、これでは責任を押し付けられた形の法務省も「ふざけるな」と思うだろう。いくら傲慢な政権だって、官庁がそっぽを向けばいつもように強行採決できるはずもない。
自分がどんなにウソをついても周囲が忖度して合わせてくれる――。モリカケ問題で、ウソをつくことに慣れ切ってしまったのだろうが、今度ばかりは相手が悪すぎたようだ。

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日刊ゲンダイDIGITALで取り上げている記事で、安倍政権はこれまでも、「特定秘密保護法」(2013年)や「安全保障関連法案」(15年)、「TPP承認案、関連法案」(16年)、「テロ等準備罪(共謀罪)」(17年)など、国民の反対を押し切って数々の悪法を強行採決させてきた。と指摘している。今回の検察官定年延長問題の強行採決に踏み切れなかった理由は、やはりSNSによる芸能人や検察OBなど通常あまり意見を述べない多くの人が、コロナによる自粛要請で自宅待機させられたことで政治に目を向けたことと、コロナ対策の指導力に疑問を持った主権者が真剣に現内閣の政治姿勢を監視し始めたからに他ならない。
財界や大企業優先、株主や資産家、インバウンドやカジノを経済発展のテコにしようとした経済成長戦略は、すべて新型コロナによってその方向性を否定された。
医療や工学の研究機関を独立行政法人化して、国家予算を削りまくった結果諸外国でできたPCR検査さえまともにできない状況が露呈した。今になってPCR検査の自動化などを騒ぎ始めているが、基礎研究がしっかりなされ、来るべき新型感染症対策をさぼってきた付けが表面化しただけである。嘘で固め、官僚を人事権で締め上げて忖度を強制し、自らに都合の良い帝国主義回帰を狙う安倍政権の野望に、主権者の目を開かせてくれた新型コロナ禍を、次世代のために「禍転じて福」としなければならない。