アベノミクス7年の悲劇 沈みゆく日本

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古賀茂明元経産官僚
1955年、長崎県生まれ。東大法卒。通産省へ。行政改革などにかかわり、改革派官僚として名を馳せる。2011年に退職、評論活動へ。「日本中枢の崩壊」(講談社)が38万部のベストセラー。近著は「国家の共謀」(角川新書)

アベノミクス7年の悲劇 沈みゆく日本

教育も科学技術も…世界で競争できない日本の未来は暗い

公開日:2020/04/25 06:00 更新日:2020/04/25 06:00

国の未来を切り開く教育と科学技術。

ここでも「日本沈没」は深刻だ。
例えば、日本の大学は世界ランキングで上位に入れない。アジアだけで見ても(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション・ランキング)、ベスト10入りは8位東大のみ。ベスト20でも、中国6校、韓国5校、香港5校と比べて日本は2校だけだ。
経営大学院(MBA)の世界ランキングでも、ベスト100に日本はゼロ。ランク入りの数で、米英に次ぐ3位中国の相手にもならない。
毎年のようにノーベル賞学者を出している日本だが、それは昔の研究への評価だ。
最近の調査(科学技術振興財団)では、先端151分野の有力論文ランキングの各分野1位は全て米国と中国だった。しかも、日本は2位に入る分野さえなく、5位以内に入れたのもわずか19分野。最重要分野といわれるAIでは、世界10位と大きく遅れている。
世界で競争できない理由の一つに英語力の欠如があるが、こちらも、調査対象100カ国中、日本は53位(EF EPI英語能力指数)。アジア25カ国中でも11位。韓国6位、ベトナム7位、中国9位より下なのだから悲しくなる。
新型コロナ対策で、欧米諸国は遠隔授業が盛んだが、「端末1人1台!」とぶち上げた安倍政権の目玉政策も2023年度までかけての話。コロナ休校で、慌てて「前倒し!」の号令がかかったが、早くて来年3月までかかる。

ICT利用教育はOECD等47カ国中46位

さらに、情報通信技術(ICT)を利用した教育を頻繁に行う中学教師の割合は、1位デンマークの90%に対して、日本は18%。経済協力開発機構(OECD)加盟国等47カ国中46位だ。テレビ会議の経験すらない教員もいるという(日経新聞)。新型コロナの感染防止対策で手いっぱいの現場で、配られた端末が有効活用できるかさえ心もとない。
ITといえば、全国の高校で、プログラミング必修化が22年度に迫るが、専任教員がいないと大騒ぎになっている。情報科(03年から必修化)に専任教員のいない都道府県が13もあり、「プログラミングを教えない情報科」があふれていたのだ。ちなみに、IMD(国際経営開発研究所)デジタル競争力ランキングでは、2位シンガポール、11位香港、14位韓国などに大きく水をあけられて日本は22位だ。
英語もITもこれまでの安倍政権のサボリのツケが今、爆発している。
ちなみに、先日LINEとYahoo!の統合でGAFAを追撃という話があったが、2社の研究費合わせて年間0・1兆円に対し、アマゾン2・5兆円、グーグル1・8兆円、アップル1・3兆円で、話にならない。日本トップのトヨタでも1・1兆円でアマゾンの半分以下だ。日本の未来はやはり暗い。

My Comment

このブログでも再三取り上げてきたが、古賀氏指摘の教育科学技術の衰退について、あまりにも文科省が科学技術教育についての哲学がない。技術の進歩を長い間一般企業にまかせ切っていて、国の教育予算で技術者を養成しなければならないことに気付くのが遅れたことが最大の要因である。団塊の世代の科学技術者や研究者が退職するとともに、企業の技術開発力は衰退の一途である。日本のお家芸であった物つくり技術はそれぞれの企業に開発部門があって、技術者を養成しつつ次世代への技術開発力も養成されていたが、儲け主義の経営者がこれらの技術者を大切に処遇してこなかったことが衰退を早めた。今や企業の新製品・新技術の開発など一部の生き残り大企業のみがかろうじて支えているのが現状である。
科学技術者養成には時間と経験が必要なことは言を待たない。その最先端であった国立工業高専が独立行政法人化して切り離し、見るも無残に交付金を削りまくった結果いまや高専における研究費はほぼ0に等しい微々たるものである。特に科学技術の基礎研究は目に見えて結果が表れるまでに時間がかかる。研究は目先の利益増加のみに惑わされては真の成果は表れない。
姑息に、小中学からプログラミング教育を取り入れても全く新しいプログラム開発者など生まれてこない。英語教育もしかり、少しばかり会話ができても全く通用しない。基本は人間性と知性を磨いたものだけが通用する。知識の詰め込み教育ではない真の人格陶冶のための教育カリキュラムに変換しない限り、現状の初等教育は単なる知識の詰め込みであり、社会に有意な人材になり得ないことを指摘しておく。