日本はもはや国の体をなしていない

日本はもはや国の体をなしていないことを実感した1カ月

斎藤貴男ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
公開日:2019/11/13 06:00 更新日:2019/11/13 06:00

この国の社会はもはや、社会としての体をなしていない。もともと小泉純一郎政権の新自由主義“改革”で危なくなっていたところを、アベシンゾーによって何もかもブチ壊されてしまった。この1カ月間だけでも――。
 菅原一秀経産相が有権者を、河井克行法相が運動員を、それぞれ“買収”した公職選挙法違反容疑で、就任早々の辞任に追い込まれた。大学入試への英語民間試験導入について萩生田光一文科相が「身の丈に合わせて頑張って」と吐いたかと思えば、河野太郎防衛相は「私は雨男」だと台風被害をウケ狙いのタネにした。
アベは「私の任命責任」だと口では言う。だが何もしない。ただ威張る。国民を腹の底からなめきっていなければ、いや、まともな大人ならできっこない言動ばかりを繰り返して、今月20日にはとうとう歴代最長の首相在職日数になるのだとか。
アベは国会の舞台でも、首相にあるまじき、というより幼児以下のヤジを飛ばしまくる。この6日には加計学園問題をめぐる文書を取り上げた野党統一会派の議員に、「あなたが作ったんじゃないの」。8日には立憲民主党の議員に「共産党か!」……。
悲しくて、情けなくてやりきれない。なんでこんな手合いが首相なのか。あり得ないだろう、普通。
だが現実である。この間には例年春の公的行事「桜を見る会」がアベとその側近らに私物化されていた実態さえ暴露された。以上はみんな、この、たったの1カ月の間に起きたり、わかったりしたクソ話だ。歴代最長の首相とやらに、この国も私たちも、とうの昔に肥だめに突き落とされている。幼児性丸出しの支配欲は、そのまま政策にもなっている。米軍とともにある戦争と、帝国主義へのむき出しの野心はご案内の通り。低能マスコミが「おトク」かどうかだけを垂れ流し続ける消費税のポイント還元は、イコール超監視社会への起爆剤だし、くだんの英語民間試験は、これも御用マスコミが萩生田発言を遠慮がちに形容する「格差の容認」どころか、あえて積極的に「格差を創造・拡大・固定化する」方便に他ならない事実を、私たちは断じて許してはならない。
日本はアベに破壊された。どいつもこいつも上しか見ないヒラメになり下がり、人心も荒廃しきった。もう手遅れだ。
私は夢想する。日本の国家そのものをいっぺん解散して、ゼロからやり直せないだろうか。ここまで来てしまったら、それ以外に道は残されていないのではないか、と。ことを実感した1カ月

My Comment

日本が戦後復興に絶大な国民の知恵と勤勉な努力をもって貧困から脱却し一億総中流階級意識を経験した。努力が報われ、社会に重用されることが人生の目標であった昭和の時代を経て、平成では野放しの金もうけ主義によって一部の富裕層を生み出し、彼らが自分に都合の良い社会へと徐々に浸透してきた結果、日本は再び江戸時代の封建社会に突き進もうとしている。戦後復興に大いなる力を発揮した日本人のモノづくりの才能が、いつの間にか金もうけや効率化ばかりに走ったため、一極集中、地方切り捨て、弱者切り捨ての弱肉強食の世相となってしまった。
国有鉄道が民間に、小泉の郵政民営化、電電公社の民営化、この間に石炭産業から石油輸入へのエネルギー転換、原子力発電への転換、果ては国立大学の独立行政法人化等々効率ばかりを重視した政治が今日の閉塞社会へと陥った。
バブル経済が資本主義社会が右上がりの成長など考えられないことを経験したはずなのに、再び経済成長ばかりを目指したがために、すべてがさらに効率化を図ったがために、AIとロボットの産業社会を生み出してしまった。政治家が政治という商売に成り下がった結果である。
国会議員の歳費が高額すぎて、こんな国民の実態など知ろうともしない人間が国民のためと称して自らの体制を維持しようとしか考えていない。
斎藤氏の言うように、もう手遅れとなってしまったように思える。
すべて国民の楽天主義と政治の監視を怠った付けである。若い時代を変えるような人間が出てこない限り、日本は沈没する。