「日本は独裁国家か」

日本外交と政治の正体

今の日本をNYタイムズ紙が「独裁国家」と表現するのは当然

日刊ゲンダイDigital 公開日:2019/07/12 06:00
孫崎享外交評論家 
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。

「日本は独裁国家か」――。国内外の多くの人が日本は民主主義国家だと思ってきた。そのため、今日まで「日本は独裁国家か」という質問すら、あり得なかった。しかし、世界で最も権威のある新聞の一つ、ニューヨーク・タイムズ紙が5日、日本を「独裁国家」と表現した。重要なので翻訳する。
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〈日本は憲法によって報道の自由がうたわれている近代民主主義国である。本来ジャーナリストが『国家の敵』とみなされるような国ではない。だが、記者が記者会見に臨むのを拒否したり、記者を懐柔するため、政治家と記者との間でクラブ的関係を使う等、日本政府は時々、独裁国家を想起させる方法で行動する〉
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民主主義の根幹に「報道の自由」がある。「報道の自由」のない国に民主主義はない。その「報道の自由」に対して、さまざまな国際機関が日本の状態に警鐘を鳴らしている。
「国境なき記者団」は毎年報道の自由度についてのランキングを発表しており、今や日本は67位である。日本の前後にどのような国があるかといえば、59位にポーランド、60位にジョージア、61位にアルメニア、62位にハイチ、63位にボスニア・ヘルツェゴビナ、64位にクロアチア、65位にギリシャ、66位にニジェール、68位にマラウイである。いずれも世界的に独裁国家と評されたことのある国々であり、日本人が「仲間」と考えているであろう北欧やオランダ(4位)、スイス(6位)やドイツ(13位)は同じグループにいない。
今の日本は「忖度社会」といわれる。しかし、この忖度は、個々人が自由な判断で忖度しているのではない。政府の厳しい「アメとムチ」の中で社会全体が忖度を選択しているのである。安倍政権への隷属姿勢をとらなければポストを外され、隷属すればポストが与えられる。こういう状況が社会の隅々まで浸透している。その「アメとムチ」が最も厳しく実施されているのが、日本メディアと各省庁なのである。
2017年8月2日。福田元首相は「各省庁の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている。忖度以上のことをしようとすり寄る人もいる。能力のない人が偉くなり、むちゃくちゃだ」と発言したが、この発言が指している状況は報道機関でも変わらない。日本はひたすら破壊に向かって進んでいるといえ、ニューヨーク・タイムズ紙が「独裁国家」と表現したのも当然である。

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「報道の自由」は保証されているとは言え、ネット社会におけるネトウヨは安倍政権を支え、SNSで反安倍の投稿には容赦のない罵倒を浴びせ、少数意見を消し去る。また、安倍信奉によってアメを得て社会的強者となった評論家の記事ばかりを集めて、発行する月刊誌や週刊誌。さらに、財界、日本会議の安倍応援団すべてアメが欲しいがための忖度ばかりの社会になってしまった。
国民が気づかぬ間に、彼らの思うような独裁国家に変貌しつつあるのが現状の日本である。ニューヨークタイムズ紙が日本を「独裁国家」と表現したことに全く共感する。気づいたときには、「士農工商」といわれる明治以前の身分社会に陥る危険性をはらんでいる現状を自覚すべきである。それらの方向を決めるのは、現代では選挙によってえらばれた政治家に託されるわけである。それだけに投票は民主主義の基本である。
政治がわからないという主権者が義理人情で選挙権を行使することは、真の民主主義を失うことになる。自分で判断できないのなら白票が正しい選挙行使の姿勢であろう。

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