地域と歩む姿勢貫いて

鈴木道政始動 

北海道新聞社説より04/24 05:05

鈴木直道知事が就任し、新しい道政が始まった。現職の知事としては最年少の38歳である。その若さと清新さに期待した道民も多いのではないか。型にはまらない発想で、人口減と高齢化で疲弊する地域の再生へ道を切り開いてほしい。鈴木知事は就任に当たり、基本姿勢の一つに「地域とともに行動する道政」を掲げた。選挙では「道民目線」を一貫して訴えた。この約束を忘れず、広く意見を聴いて地域に根ざした姿勢を貫いてもらいたい。
全国唯一の財政再生団体である夕張市の市長を8年間務めたとはいえ、約530万人の道民の暮らしを守る重い責任を担うには相当な覚悟が要るだろう。これまで道政運営を支えてきた道職員や道議会と十分な意思疎通を図る必要はあるが、前例に縛られることはない。大切なのは、道内各地の実情を把握した上で主体的な判断を下すことだ。
最初の試金石となりそうな重要課題は、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の誘致問題である。高橋はるみ前知事が、誘致に前向きな姿勢を強くにじませた道の基本的な考え方を公表した。道民の賛否が分かれる大きな問題について、退任が決まった知事が、流れを作るような言動をするのはおかしい。
最終的な判断は、新知事に委ねられている。選挙で「道民目線で判断する」と主張した以上、ギャンブルを地域振興に利用することの是非から議論をやり直すべきだ。
JR北海道の路線見直し問題への対応でも、手腕が問われよう。JRは単独では維持困難とする8路線に関し、2012年度以降に道と沿線自治体から年40億円程度の支援を受けなければ、資金不足になると見込む。自治体にとっては、過重な負担というほかない。鈴木知事には、国、JR、沿線自治体との調整に汗をかき、地元負担を軽減しながら路線維持につなげる役割を期待したい。
道財政は借金である道債の残高が5兆円を大きく上回り、夕張市の市債残高の300倍を超える。鈴木知事は会見で自身の給与の3割削減を明言したが、小手先で改善できる規模ではない。既存事業に大胆に切り込んで財政再建に真正面から取り組むと同時に、限られた財源を最大限に生かす創意工夫が求められる。

My Comment

鈴木新知事の夕張市長としての8年間は、確かに北海道の実情理解に役立ったことは理解はできるが、広い北海道の各市町村の問題点や、道庁がなすべき課題が本当に理解できているのか道民は、その行動を注視している。
一方、高橋知事は退任を前に、自らの16年間を総括した評価を発表し自画自賛したが、北海道の進むべき方向について、持論を明らかにしたことはなかった。チャンスだった道州制を北海道の発展の礎にするアイデアも哲学もなかったことが、知事選を前にした各界の提言からも明らかである。
失われた16年は道民の期待の割に対症療法としか映らなかった。特に、IR誘致に関しては、誘致に絡む利益団体のみが賛成し、大部分の道民は反対(知事選における出口調査で75%が誘致反対)である。今更道民目線などという言い逃れは許されない。真っ先にIR誘致断念を表明すべきである。そうあってこその選挙公約であろう。