日本からノーベル賞が出なくなる

安倍政権で研究費ジリ貧

日刊ゲンダイdigital 公開日:2018/10/04 06:00

基礎研究をシステマチックかつ長期的な展望でサポートして、若い人が人生を懸けてよかったと思えるような国になることが重要だ」――。ノーベル医学生理学賞の受賞から一夜明けた2日、京大の本庶佑特別教授はそう語った。現状はどうなのか。研究開発費の推移を調べると、お寒い状況が浮き上がった。
経産省が今年2月にまとめた調査によると、日本の官民合わせた研究開発費総額は、2007年度以降、17兆~19兆円で推移している。つまり、10年以上横ばいで増えていないのだ。企業の儲けは内部留保に向かい、研究開発に投じられていないことがよく分かる。
さらに驚くのが、研究開発費の政府負担割合だ。日本はわずか15.4%で、主要国から大きく引き離されて最下位(別表)。しかも、安倍政権発足前は16%超だったのに、発足後の2013年から右肩下がりなのだ。
「目先のことしか頭にない安倍政権は、研究開発とりわけ、基礎研究の重要性をまったく理解していません。一方で、軍事強化につながる基礎研究には力を入れています」(経済評論家・斎藤満氏)
安倍政権は2015年度から「安全保障技術研究推進制度」を導入。国の防衛分野の研究開発に役立つ基礎研究を民間企業や大学に委託、カネを出す制度で、“研究者版経済的徴兵制”といわれている。軍事目的のための科学研究を行わない方針の日本学術会議は反発しているが、16年度予算6億円に対し、17年度は110億円に急増している。
本庶さんは今年、ノーベル賞を受賞しましたが、何十年か前に、基礎研究にしっかり取り組めた環境があったからです。現在の安倍政権のような基礎研究に対するスタンスでは将来、ノーベル賞受賞者が出なくなるだけでなく、もはや日本は技術立国とは言えなくなってしまいます」(斎藤満氏)

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このブログでも再三指摘しているが、2004年に国立大学・高専の独立行政法人化が強行されたが、ここにきて大学教育や研究に大きな危機が起きている。今回、京大の本庶佑特別教授がノーベル賞受賞に際してのコメントをしっかり聞き留めてもらいた。
国立大学・高専が多くの教員の反対にもかかわらず、独立行政法人に移行してからは運営交付金が毎年1%、すでに14%も削減され続けてきた。運営交付金の削減はまず、研究費の削減となり、更に非常勤講師ばかりの教育に陥る。もはや安定した環境で研究や教育を考えることさえできない状況に陥っている。そこへもってきて、潤沢な予算をニンジンに防衛省が研究費を出して国防に関する先端技術を研究させたり、極右勢力(=日本会議メンバー)が反日と決めつける研究を阻止しようと、自民党・公明党議員がツイッターで、これをいかにも正論かのように掲げ、大学や教育にまで干渉し始めている。
少子高齢化によって、誰でも入れる大学は淘汰させるべきであり、満足に卒業論文も書けない段階での就活などもってのほか。これらの2・3流私立大学へ運営交付金を出すならば、独立行政法人に削減した運営交付金を返還すべきである。科学立国の日本が将来にわたって、世界に伍していける国となるために何よりも高度な知識をもった科学者・研究者・技術者こそが必要である。筆者には、今改革しなくてはもう立ち直れない時期にあるという危機感を持つのだが、安倍政権は、加計学園をはじめとする私立大学の間口を広げ、体育系の大学ではオリンピック目当てに入学してくる学生を優遇し、真の後期高等教育を実践している国立大学・高専の学生の教育環境はますます劣悪になって、基礎研究どころか通常の教育そのものがレベル低下に陥っていることを知る必要がある。
世界に伍して経済大国となった最大の功労者は日本の科学者・研究者・技術者の基礎研究があったればこそである。口先ばかりの政治屋には任せておけない重大な分岐点である。