「地球温暖化はでっち上げ」か

地球温暖化

トランプ米大統領の決断の是非はさておき、地球温暖化の原因が二酸化炭素であるとの通説がまかり通り、CO2排出権の売買まで行われている現状は工学や科学を専攻した人間にとって常に素朴な疑問を感じていた。それほど地球が安定した惑星であるとは感じていないし、現に大地震や火山の予期せぬ噴火は、人間が地球のすべてを知り尽くしたかのようなおごりを戒めているように思えてならない。地球を取り巻く太陽系全体が変化の過程にあって、一刻もその変化を休むことはない。
今一度CO2原因説を徹底議論したうえで、人間活動に制限が必要であるならばその方法を研究すべきである。IPCCのやり方は全く非科学的であって、中川氏の言う、温暖化をよしとするか、寒冷化をよしとするかはまさしく人間の哲学の問題であるという考えに賛同するものである。
以下、参考までに記事を掲載させていただく。



2017.06.09 道新朝刊より。

「地球温暖化はでっち上げ」か 気候変動繰り返した46億年

「地球温暖化はでっち上げ」と主張してきたトランプ米大統領が、温暖化対策の「パリ協定」からの離脱を表明したことに対し、世界各国から反発の声が上がった。道内でも過去100年で平均気温が1.59度上昇し、2 1世紀末にはさらに3度上がると見込まれる。対策は待ったなしに思えるが、地球の4 6億年の歴史には、南極、北極に氷がない暖かな時代も、赤道付近まで氷に覆われていた時代もあった。気候変動の経過を振り返ると、別の地球の姿が見えてくる。                    

(報道センター編集委員 荻野貴生)

10万年単位で十数度上下 「現代 例外的に気温安定」

 立命館大古気候学研究センター(滋賀県草津市)。国内の研究機関で古気候学の看板を掲げるのはここだけだ。センター長の中川毅教授(古気候学)は「地球は10万年単位で暖かくなったり、寒くなったりしている。地球の公転軌道が楕円で、時代によって太陽との距離が変わるからだ。
気温差は10万年単位で十数度あり、地球は放っておいても気候が変動する」と語る。
 2億7千万年前から2億5千万年前は、温暖化と言われる現在より10度近く平均気温が高かった。これは東京がマニラ、モスクワが東京の気温になるのに匹敵する。
 グリーンランドでの調査では1万4700年前、数年の間に7度ほど気温が上昇したことが分かっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2 1世紀未までの100年で、対策を何も講じなかった場合に最大5度上昇すると予測した数値を上回る。人間の活動による影響はなかったが、海流や風向きの急激な変化で気候変動が起きたとみられる。
「過去を見れば気温の上下変動が激しかったことの方が多く、現代は極めて例外的に気候が安定している」 (中川教授)

二酸化炭素やメタン 「氷期」到来防ぐ?

 地球温暖化の原因はこれまで、工業化に伴う二酸化炭素などの排出が大きいとされてきた。ところが、米バージニア大のウィリアム・ラディマン教授(海洋地質学)は2005年、二酸化炭素は8千年前、温室効果が高いメタンガスは5千年前から増加しているとの学説を打ち出した。
 二酸化炭素増加はヨーロッパ人が木を大量に伐採したから、メタンガスはアジアで始まった稲作の田んぼが発生源とした。人間の経済活動がなかったら、氷期が到来していたと推測し、学界に披紋を広げた。
 中川教授によると、温暖化は植物が成長し、光合成が活発になることで二酸化炭素が吸収され、気温の上昇にブレーキがかかる。ところが、寒冷化は雪氷が太陽エネルギーを反射してはね返すことで、いっそう寒くなり、暴走する傾同がある。
 今後1万年は氷は増えないというシミュレーションもあるが、仮にそうなったとしても中川教授は「これを地球温暖化で困ったと考えるか、氷河期がこないでよかったと考えるかは科学ではなく、哲学の問題と話す。
 火山の噴火も気候変動の要因となる。大気中に放出された大量のちりが雲を作り、太陽光を反射するからだ。記録的低温となり、米不足を引き起こした1993年の日本の冷夏は、91年に起きたピナツボ火山(フイリピン)によるものと後に判明した。

太陽活動 低下期へ 「不安定さ増す気候」

 地球の気候は今後、どうなるのか。中川教授は「温室効果ガスは、たとえ今から排出を削減したとしてもしばらく増え続ける。一方、太陽は21世紀、地球を冷やす方向に作用するだろう」と予測する。
太陽活動は短期では11年程度、長期では210年程度の間隔で変動しており、今後は低下するとみられている。過去の太陽活動低下期には、現在凍らない英国のテムズ川が凍結し、それを示す絵が残っている。日本でも飢鐘が頻発した。
 「過去100年は太陽と人間が地球を暖めてきたが、今後の100年は活動が低下する太陽と人間の活動との綱引きになる。こういう時代は不安定な気候になる可野性が大きい。最も怖いのは予測のつかない気候の不安定さだ」。

中川 毅 (なかがわ・たけし)

1968年東京都生まれ。京都大理学部卒。英ニューカッスル大教授などを経て、2014年から現職。
著書に「人類と気候の1 0万年史」「時を刻む湖」など。

古気候学 

樹木、サンゴの年輪、鍾乳石、堆積物(海洋、湖沼、泥炭)、古文書などを使って過去の気候を調べる学問。気温によって変わる樹木の年輪の幅は数百年から数千年単位の気候変動を把握するのに有効。
それを超えるものは堆積物に含まれる化石(植物など)や化学成分を調べる。グリーンランドなど、雪が解けないでできた氷床を調べることで、数万年単位の大気の成分が分かるほか、水の組成(同位元素)を調べることで、当時の気温が分かる。鍾乳石は数十万年単位の降水量の変化を把握できる。