日本の科学研究の失速

「ネイチャー」日本の科学研究の失速を指摘

NHKニュース  3月23日 4時36分

世界のハイレベルな科学雑誌に占める日本の研究論文の割合がこの5年間で低くなり、世界のさまざまな科学雑誌に投稿される論文の総数も日本は世界全体の伸びを大幅に下回ることが、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」のまとめでわかりました。
「ネイチャー」は、「日本の科学研究が失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と指摘しています。イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は、日本時間の23日未明に発行した別冊の特別版で日本の科学研究の現状について特集しています。
それによりますと、世界のハイレベルな68の科学雑誌に掲載された日本の論文の数は、2012年が5212本だったのに対し、2016年には4779本と、5年間で433本減少しています。
また、世界のハイレベルな68の科学雑誌に掲載された日本の論文の割合は、2012年の9.2%から2016年には8.6%に低下しています。さらに、オランダの出版社が集計した、世界のおよそ2万2000の科学雑誌に掲載された論文の総数は、2005年から2015年にかけての10年間で、世界全体では80%増加した一方で、日本の増加は14%にとどまり、日本は世界全体の伸びを大幅に下回っています。
特に、日本が以前から得意としていた「材料科学」や「工学」の分野では、論文の数が10%以上減っているということです。
こうした状況について、「ネイチャー」は、「日本の科学研究がこの10年で失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と指摘しています。その背景として、ドイツや中国、韓国などが研究開発への支出を増やすなか、日本は大学への交付金を減らしたため、短期雇用の研究者が大幅に増え、若い研究者が厳しい状況に直面していることなどを挙げています。
「ネイチャー」は、特集記事の中で、「日本は長年にわたり科学研究における世界の第一線で活躍してきたが、これらのデータは日本がこの先直面する課題の大きさを描き出している。日本では2001年以降、科学への投資が停滞しており、その結果、日本では高品質の研究を生み出す能力に衰えが見えてきている」と記し、長期的に研究に取り組める環境の整備が求められるとしています。

My Comment

「ネイチャー」が指摘している日本の科学研究の失速は、大学の独立行政法人化によって、従来では、安定した研究費の配分により、先端技術はもちろん基礎研究などにも人材が豊富に存在した。しかし、聞こえの良い自由競争を提唱した独立行政法人化が,これらを切り捨て研究費や交付金の削減を10年以上続けてきた。そして交付金による縛りで文科省に顔の利くOBの天下りが日常化し、これらのOBによって研究費配分がゆがめられてきた結果、「日本の科学研究がこの10年で失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と指摘されているのです。
一方、従来では憲法上の制約から、兵器関連の研究はあえてタブーとされてきた科学界では、防衛省による兵器関連研究に巨額の研究費を出し、これらの研究を進めるように独立行政法人にニンジンをぶら下げている。
背に腹を変えられない独立行政法人の天下り学長や事務部長はこれを推進しようと躍起である。彼らはほとんどが理系の技術者ではなく人文系の学長であることからさらにこの事態に気付きにくい。
しかも、短期間で結果を出さなければならない研究では、底の浅い上滑りの技術しか開発できないことを理解できていない。
科学技術者は長年の研究の結果として人間に役立つ技術を生み出すための努力をしているのであって、防衛力や儲かる企業のために研究しているのではない。今こそ技術者倫理を前面に押し出す声を上げてもらいたい。

この資源のない日本で、人間らしい生活のために必要な技術を開発することこそ日本の目指すべき方向であり、経済ばかりを追い求めることが結局本来の日本人の生活を破壊していることに皆が気付いてほしい。
従来の日本の職人は後世に残る、素晴らしいモノづくり技術を残してきた。日本人の職人意識をもっと優先すべきであるし、優遇しておかなければ将来に禍根を残す。