連続ノーベル賞

科学技術の力示す快挙

北海道新聞 10/8朝刊 社説

 連日の快挙をともに喜びたい。今年のノーベル賞で、大村智・北里大特別栄誉教授(80)の医学生
理学賞に続いて、梶田隆章・東大宇笥線研究所長(56)の物理学賞受賞が決まった。
 大村さんは、アフリカなどの人々を苦しめてきた感染症の特効薬を開発。のべ10億人以上に投与され、多くの命を救った。
 梶田さんは、物質の最小単位である素粒子の「ニュートリノ」に質量があることを証明し、物理学の常識を大きく変えた。
 人の役に立つ実用的な研究、物質や宇宙の謎に迫る基礎科学と、分野は対照的だが、いずれも日本の科学技術の水準の高さを世界に示したといえよう。

中略

 これで日本人のノーベル賞受賞者は、米国籍取得者を含めて24人となる。自然科学系は00年以降だけで16人と米国に次ぐ。ただ、21世紀以降の日本人の受賞の大半は1980~90年代の業績に基づいている。それだけに、今の研究現場の状況が気にかかる。目先の成果主義に走り、基礎的な研究がおろそかにされる傾向が否めないからだ。
 国立大で幅広い研究を支えてきた運営交付金が削減され、競争原理に基づく科学研究費が導入された。若手研究者の雇用は不安定と昨年のSTAP細胞騒動はまさにそうした環境の中で起きた。科学技術立国を目指すなら、その土台となる基礎研究にも予算をきちんと配分しておく必要があるだろう。民間の積極的な協力も後押しになる。

My Comment

日本人のノーベル賞受賞者が24人となる。日本人はもとより世界の人々に日本人の優秀さを改めて示す快挙である。
 近年の和食ブームや日本の職人・中小企業の技術水準の高さ、伝統文化、アニメや漫画文化すべてが広く世界に認められてきた証拠でもある。
 ただ一つ、お粗末なのは、官僚・経団連・資本家・投資家の言いなりの政治家が、日本的家族制度を崩壊させ、老人を厄介者扱いするような風潮を蔓延させ、教育現場ではいじめや自殺への対策も打てず、窃盗や詐欺の横行は目を疑う社会状況を生み出したことである。すべては政治による国の在り方が議論されず、数による権力争いの結果である。政治家の支援企業献金や日歯連のようなエゴ集団に操られる政治家ばかりである。
 安倍ノミクスはこれらを助長するだけで、今後の経済成長は決して真の国民の幸福感は得られないことを知るべきである。
 しかも、多くの国民が憲法違反であるという集団的自衛権も、安倍政権は都合の良い解釈が憲法をいかようにも捻じ曲げられるという民主政治の根本を否定した。明らかに武器輸出・防衛予算の拡大・核保有等々将来にわたって明治維新の富国強兵・大東亜共栄圏のような発想を持つ翼賛政治に回帰しつつあるのは、筆者の思い過ごしだろうか。

社説で指摘されているように、研究・学問は安心して長年にわたって打ち込める環境が必須であり、国立大学・高専・研究機関が独立行政法人に代わってからは、運営交付金の形で、目に見える研究以外は排除するという由々しき事態に陥っていることを知ってもらいたい。
これから数十年後にはノーベル賞受賞者が先細りしていくことを回避しなければ日本の将来も危うい。