山手線 支柱事故

山手線 トラブル前に支柱に大きな傾き

5月4日 19時13分

東京のJR山手線で線路脇の支柱が倒れてレールに接触したトラブルで、トラブルの前に支柱が基礎の部分から大きく傾いていたことが、当時、現場で撮影された写真で明らかになりました。専門家は「現場が直ちに緊急事態だと認識しなかったのは問題だ」として、教育や訓練の在り方を見直す必要があると指摘しています。
先月12日、東京・千代田区のJR山手線で、線路脇にある架線の支柱が倒れてレールに接触するなどした問題では、トラブルの2日前に工事の担当者らが支柱が傾いていることに気付きましたが、当時、すぐに倒れる危険はないと判断し、改修は行われませんでした。現在、国の運輸安全委員会やJR東日本などがトラブルの原因や経緯を調べていますが、トラブルの前に支柱が傾いていたときの状況が、当時、現場で撮影された写真で明らかになりました。

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これについて、電気鉄道に詳しい工学院大学の高木亮准教授は「この状態を見て、現場が直ちに緊急事態だと認識しなかったのは問題だ。大きな力がかかる場所であり、ここから先は倒れるスピードが急速に速まると考えて、緊急な措置を講じるべきだった。現場の人たちが危険を予知する感覚を研ぎ澄ませるように、教育や訓練のやり方を再考しなければならない」と指摘しています。こうした状況について、JR東日本は「緊急性がないと判断し、その後、改修する計画にしていたが、結果的に判断が甘かったと考えている」としています。

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その後の調べで、設計の担当が、支柱が単独の状態となることを認識していなかった一方、施工の担当は、支柱が単独の状態になると問題があるとは認識せずに、はりを撤去していたことが分かりました。運輸安全委員会では、施工と設計の担当の間の情報共有についても調べを進めることにしています。

My Comment

この事故に関するコメントはこれで3回目である。
なぜ私がこの事故にこだわるかといえば、日本の科学技術が重厚長大のビッグプロジェクトから、技術者の専門分野が分散化し、これを取りまとめるシステム設計やシステム管理技術が軽視されてきたとみるからである。
技術者の専門分野が分散極小化されることは高度な技術発達には欠かせないが、一方で複雑なシステムを管理しシステムを安全に稼働させる技術者を軽視し育成してこなかったことが明白であるからだ。
団塊の世代の技術者は専門以外の分野であっても、現場に優秀な経験豊富な現場管理者がいた。彼らが危険を予知しシステムを安全にしてきたことを忘れてはならない。
これらのいわゆる熟練工を継続雇用せず、早期に年金世代へと追いやった厚生労働省や経済産業省の政策判断が招いた事故である。
それは科学技術教育の現場にも表れ、少ない科学技術研究費は最先端研究にしか配分されず、伝統的な基礎研究や人材育成には研究費さえ出さない文科省の政策ミスでもある。
科学立国を標榜するなら、科学技術が広範囲の産業や技術に支えられていることを忘れてはならない。
そのためには何でも資格のみで職業を限定したり、採用を決めてていては、ますます極小化された技術者しか育たないことを学んでほしい。
社会で起こる事故や事件を見ていればその原因は見えてくるし、それから学ぶことが非常に多いが、その対策たるや極小化した対策でしかなく、政治家がいう抜本的改革などはその原因をしっかり把握しなければ有効な対策は出てこないことを学ぶことだ。